ロリータの殺意
寝言
結婚生活七年目。妻が寝言を言うようになった。
最初のうちは気にしなかったけれど、それが原因で、僕はあまり寝られないようになってしまった。
「病院で診てもらったらどうだろう」
ある日、僕は妻に提案した。しかし彼女は取り合わなかった。
「私は健康だし、病院へ行く必要なんてないわ。あなたは大げさよ」
自然に治るかもしれないとわずかに期待したのだが、妻が寝言を言わない日はなかった。
満足に眠れないことへのストレス。夫の身を案じようとしない妻への憤り。うっぷんがたまって、僕は良からぬことを企んだ。
こんな迷信がある。
「寝言に返事をすると、寝言を言った人は二度と目覚めない」
僕は妻の寝言に返事をしてやろうと思いついた。さっそくその日の夜から実行してみることにした。
「台所は主婦の城よ……」そんな妻の寝言に対し、僕はこう返事した。「じゃあ夫にとっての城はどこだろう?」
すると、思いもよらぬ返事があった。「夫にとっての城なんてどこにも存在しないわよ……調子に乗らないで……」
もうやめたほうがいい。ここで会話を止めないと、彼女は本当に二度と目を覚まさないかもしれないぞ。心の声が、僕に警告した。しかし僕は、興奮で我を失ってしまっていた。
「夫にも城をくれよ。たとえば書斎なんてどうだ?」
「じゃああなたの城は書斎ね……」
「でも、この家には書斎はないよ」「じゃあ作ればいいのよ……」「どこに?」「あなたの好きな場所に……」「寝室の隣なんてどうだろう」「いいんじゃないかしら……」「じゃあおやすみ」