ロリータの殺意
生命維持装置
「やあ、よくきてくれたね」
画面の中にいる友人が言った。
彼の肉体は、ベッドで横になっている。からだじゅうから線が伸びており、部屋の隅に置かれた大きな箱につながれている。またその箱からも線が伸びており、それは友人を映した画面の機械につながれている。
「驚いただろう? ははは。見舞いにきてくれた人はみんな、今の君と同じような顔をするんだよ」
「これはどういうことなんだ?」私はたずねた。
「話せば少し長くなるが」と前置きして、友人は話した。
橋を歩いているときに自動車に轢かれ、運悪く真下へ転落したという。橋の高さは、二十メートル。救急隊が駆けつけたときには、心肺停止状態だった。
「車に轢かれた時点では、僕はまだ意識があったんだ。だけど橋から落っこちたときには、完全に意識がなくなった。そのときに僕は死んでいるんだよ」
「じゃあどうして君は……そうやって自由に喋っているんだ」私は吐き気をこらえながら言った。「まだ生きているからじゃないのか?」
「解釈によっては、生きていると言えるね。でも考えてもみろよ、今そこにある肉体は二度と動けないんだ。生命維持装置がなかったら、ただの死体だよ」
「こんな言い方をして申し訳ないが……二度と動かすことができないなら、ここに肉体を置いておく必要はないんじゃないか?」
「いや、理由ならあるよ。その肉体がなければ、僕はこうやって自由に喋ることができない。つまり、肉体はコンピュータなんだ。こうして画面に映っている僕は、出力されたデータということさ」
「じゃあ、一生このままということか?」