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エッセイ集:コオロギの素揚げ

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創作裏話 多重人格と憑依現象(解離性同一症)



 ジェームス三木氏の小説『存在の深き眠り』を読んだのは、10年前である。テレビドラマとして、多重人格で殺人犯とされた主人公を大竹しのぶ氏が演じたことが付記されていて、彼女の演技を頭に思い浮かべながら読んでいくと、そのイメージが強まりさらに深く感銘したのである。
 その後2回再読し、そのたびに強く心に残るものがあった。

 小説を書くようになってから4年間、ずっと心理描写にこだわり続け、いつか多重人格者を主人公に取り上げて、ひとりの人間がいくつもの人格を有する、その異なる性格を描いてみたかった。
 やっとその下地ができたと思い、創作を始めたのである。

 タイトル・・・いろいろ考えたが、“深き眠り”、“存在” という言葉がどうしてもマッチしてくる。結局、『深く眠りし存在の』としたが、ま、同じようなタイトルを使用することは巷のプロたちもやってることやし、と思って自分で許諾したのである。
 最後に付いている “の” の存在も、そのあるなしを考えていただきたい。ニュアンスが異なってくることに気付いてもらえたらよいのだが。そういう細かいところまで、一応考えた。

 表紙・・・キツネの像にこだわり続けて伏見(京都の伏見稲荷神社のこと)まで行かなあかんかな、と思いつつ検索していると、求めれば通ずとやらで、大阪市阿倍野区に安倍清明神社があることが分かり、写真を撮ることだけの為に出かけた。冷たい風が強く吹いている日にわざわざ、である。思い立ったが吉日、とばかりに。
 そこで、清明の母・葛の葉狐の姿と巡り合い、いろいろな姿をしたキツネ像を写すことが出来たのだが、消えてたらどないしょ、祟られるようなことはしてへんよな、とパソコンに取り込むまで気が気でなかった。

 多重人格(解離性同一症)・・・病気の一種であることを広く世間に知らしめたのは、アメリカの精神科医が患者の了承を得て書物にし、映画化もされヒットしてからである。50年以上前になるのだろうか。その患者は、普通の生活に支障をきたしていた為に受診したのであるが、ある時点で完治したとみなされた。だがまだ、別の人格が現れることがあってそれを訴えても信じてもらえない。多重人格を治療した、として有名になった医者にとっては完治していないと困るのである。真実でないことが独り歩きしているのを知って彼女は自伝を、幼少期に一緒に暮らしていた従妹(精神科医になった)の力を借りて出版したのである。
 その後、犯罪者の精神鑑定で多重人格者が見つかることがあり、多重人格者は犯罪を起こしやすい、と誤解されることがあるようだが、また日本人の猟奇殺人犯が多重人格としてフランスで無罪となった事件もあったが、実際は自身の生活に多少の弊害はあっても、普通に生活している人がほとんどだという。

 世界中に古くから存在している、占い師・霊媒師。そういった人たちも解離性同一症の症状を呈しているのだとか。宗教的なトランス状態もしかり、それを病と見るのか・・・。
 日本においては伝統的に、キツネ憑き、が存在し、憑依現象が社会的に受け入れられる土壌があって、多重人格は症例として表立つことはなかった。そういった時には、精神科を受診するよりもお祓いを受ける方が普通のことだったからである。
 昨今ではその知識が広まり、多重人格という症状は日本でも増えつつあるそうだが。

 さて私自身、いろいろな性格が時により発現してくる。多色人格、とでも名付けようか。
 本体は真っ白な心を持っているのだが、腹黒いことを考えて実行したり、赤い炎のように情熱を燃やすこともあれば、ブルーになることもある。突如緑色した嫉妬の炎に狂うこともあれば、氷のように透明な冷ややかな心で物事を見つめたりもしている。
 そして近頃頻繁に、黄昏色、となり・・・。


                   2014年11月19日