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アナザーワールドへようこそっ!  第三章  【048】

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  【048】



「では、まず今日は我々『人間族』の歴史から始める…………。まず、千年前に誕生したこのアナザーワールドと我々の先祖は『アダムとイヴ』の二人の神により文明を発展させてきた。現在、我々が使用することのできる『魔法』も、神から授かった能力のひとつである……ここまではいいな?」

「「「「「はいっ!」」」」」

 周りの生徒たちは皆、それが『さも当たり前』のように、当然のように返事をする。

 まあ、確かに、俺のような『異世界』である『地球人』からすれば『ありえない話』に聞こえるのだが、この世界(アナザーワールド)ではこれがむしろ『あたりまえ話』となるのだろう。そう考えると、俺の考え方のほうが、むしろ『非常識』ということ……であるのだろう。

 とは言え、こうやってこの世界の歴史を聞いていると、ここのことが少しずつ見えてくるのは、何にしてもありがたい。

「そして、我々の先祖は『魔法』を発展させ、今日のような豊かな社会の礎を築いた。現在の電気も、車も、生活必需品も、すべて『魔法』を研究、発展させた『結果』だ。故に、その研究・発展させた『魔法学者』は、王国では『国賓』となる。そして、その豊かな生活を享受し、さらに発展させていくためには、君たち若者のこれからの努力が必須となる。特に、この『王立中央魔法アカデミー(セントラル)』の生徒ならなおさらだ。そのことを忘れてはならない」

『魔法学者』…………地球でいうところの『科学者』と言ったところか。

 どうやら、今の話を聞く限り、この世界(アナザーワールド)の『魔法』は、地球で言うところの『科学』と同じ役割のようだった。ということは、『魔法学者』は『科学者』…………と言ったところか。

 正直、『深入り』はしないほうがいいとは思うが、しかし、この世界(アナザーワールド)で目的を達成するまでは、この『魔法』についての理解を深めることは必要不可欠だと感じた。まあ、その辺もこの学校(アカデミー)の授業で教えてくれるだろうし、本当に助かる。

「さて……そんな先祖の『創世の時代』から『魔法・社会の発展』や『神託の書の管理・継承』などを行ってきたのが、『セントリア王室』となり、その王室の歴史は現在で『約五百年』続いている。ちなみに、現在のリサ・クイーン・セントリア女王陛下は、『第十代王位継承者』となる」

 そうか~……、この世界の……『人間族』を統治している『セントリア王室』ってのは、そんな昔から続いていたのか。でも、そんな長い歴史であれば、それだけ、いろいろと……、

「しかし、これまでの王室の……セントリア王国の歴史は決して平坦ではなかった。度重なる『王室内での権力争い』や、『他種族からの侵略』といった多くの困難の連続であった」

 まあ、そうだろうな……。

「――そんな中、現在の王室のような『安定した王室』になったのは、前国王である『バーナード・キング・セントリア国王陛下』が即位してからだったっ!」

「「「「「おおっ……!」」」」」

 ビクッ!?

 ああ、ビックリした。

 突然、皆のテンションが一斉に上がった。

 ちなみに、メガネツン女史の説明にも興奮の色が濃く出始める。

「バーナード・キング・セントリア国王陛下…………誰もが尊敬していた、『セントリア王国』の『歴代の王』の中でも、もっとも勇猛で、かつカリスマ性を備えた王。このバーナード・キング・セントリア国王陛下がご即位されてからの三十年の間に、『王室内の権力争い』は終止符を打ち、『他種族の脅威』は防いだ。また、それだけではなく、現在の豊かな社会の基礎を築き、発展させたことでも有名だ。バーナード・キング・セントリア国王陛下…………まさに偉大な王だった」

 メガネツン女史は、天井を見上げて、自分の世界に入りながら力説していた。すると一人の生徒が、

「先生! 先生は、前国王……バーナード・キング・セントリア国王陛下とは、共に『他種族』と戦ったことがあると聞きました。前国王はどのような人物だったのでしょうか!」
「良い質問だっ、そこのお前っ! 十点っ!」

 ふぁっ!?

 何の加点だ、今の?

 どうやら、メガネツン女史もイキオイに乗ってきたようだった。

「バーナード・キング・セントリア国王陛下は、それはもう凄かった。戦いではいつも、我々兵士よりも前線に出て、攻撃をしかけていた……しかもその攻撃力は、同じ人間族はもちろん、他種族を含めて、それらを大きく凌ぐほど圧倒的だった。故に、我々、兵士はどれだけ前国王に命を救われたことか…………」

 へえ~、そんな凄い人なんだ…………リサの親父って。

「そんな前国王のおかげで、それまで王室には『目立った権力争い』も無くなり、『他種族の侵略』も無いに等しいほどとなり、平和を享受し社会を発展させてきた…………だが、三年前の『前国王の崩御』によりその平和は…………崩れた」

 メガネツン女史は、それまで高揚していた顔から一変、悲しげな表情に変わる。

 それは、話を聞き入っている周りの生徒たちのほとんどもそうだった。

「現在、我がセントリア王国は、『他種族の脅威』に再び脅かされている。現国王のリサ・クイーン・セントリア女王陛下も、それを危惧し、魔法士の増強に力を入れている。そのための施設がこの『王立中央魔法アカデミー(セントラル)』となる」

 なるほど…………地球で言うところの『軍隊学校』といったところか。まあ、『他種族の脅威』がある以上、それが『当たり前』なのだろう。しかし、地球ではそんな戦争とは遠い存在だった生活をしていたためか…………まだ、その頃の俺では『戦争』という『現実』は、どこか『非現実』のものでしかなかった。


 だが、俺は…………俺とシーナは、この先、『種族間戦争(スピーシーズ・ウォー)』に嫌でも巻き込まれることとなり、そのとき、俺は初めて『戦争』という『現実』を知ることとなる。