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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 けどなー美人候補とはいえ、歳がな。インロー低すぎ、打っても引っ掛けてサードゴロが関の山だろう。俺は少し笑って答えた。
「ここは俺の街だ」
 そして中腰のまま俺は外に駆け出した。今度はマスターと常連客たちが「がんばれ」とか「気をつけろ」とか無責任な声援を送ってくれた。ま…… これもこの街らしいか。
 俺は懐から愛用の拳銃ベレッタM84を引っ張り出し銀行めがけて走った。
 強盗共は待っていた車、2世代前のクラウンワゴンのリアハッチを開けると鞄を放り込んでいた。俺はロータリーをまっすぐ突っ切る。田舎町だ、駅前ロータリーとはいえ車なんか2〜3台しかいなかった。ロータリーの真ん中あたりで俺は止まった。やつらまでの距離50m。拳銃ではちょっと遠い距離。走りながらすでにベレッタのセフティを解除し薬室に弾丸が入っている事を示すインジケーターを念のため確認済み。
「止まれ」
 俺の声に強盗達は一斉に振り返り銃を俺に向けた。
 銃声が轟き、拳銃の男が倒れた。俺の正確な射撃が奴の顔面をとらえたのだ。普通の人間には遠くても俺にはなんでもない距離だった。
 ショットガンの男が撃ってきた。俺は身を低くする。散弾が数発命中する。が、痛いで済んだ。さっき言ったとおり銃身を短くしたショットガンは広範囲に弾丸をばらまく。したがって接近戦では圧倒的な戦力だ。が射程距離は大幅に減少する。50mも離れれば人を殺す能力は無いのだ。膝つき状態で目だけ腕でカバーした俺はそのままの姿勢で余裕を持ってショットガン野郎を狙い撃った。弾丸は狙いたがわずやつの右腕に2発命中し男は銃を落として後ろに倒れた。後は車だけ。その車はホイールスピンもけたたましく発進した。そのまま逃げるかと思ったがなんと俺に向かってターンして突っ込んできやがった。凶暴な野郎だ。俺はクラウンのでっかいフロントグリルに3発撃ち込んだ。白い煙がエンジンルームから吹き出した。フロントグリルの中にはラジエターがある。破壊されたラジエター内の高温の水蒸気が吹き出しドライバーの視界もふさぐ。冷却水を失いエンジンもすぐオーバーヒートだろう。動揺してやつはハンドルを切りすぎた。ハーフスピンを起こし元いたあたりのガードレールに突っ込んだ。しばし後ドライバーがよろよろと出てきた。なんと手にイングラムを持っていた。世界最小クラスのサブマシンガン。しかし45ACP、あるいは9mmパラベラム、つまり現代のベストセラー大型拳銃弾を1秒間に20発近く発射できる凶悪な銃だ。撃たれたらかなりやばい。俺はやつが俺を見つけ構えようとするのを確認してベレッタを発砲した。男は額から白っぽいものを出しながら後ろに倒れ動かなくなった。
 クラウンに一人しか乗っていなかったのを確認して俺はショットガンの男に歩み寄った。
奴は意識があり俺と奴から2mあたりに落ちているショットガンとを見比べていた。
 俺は3mまで接近してからベレッタを向けた。そしておもむろに話しかける。
「お前の考えている事はわかる」
 やつの瞳が恐怖で震えていた。
「俺がもう6発撃ちつくしたか、それともまだ5発かだ……」
 するとやつは必死で恐怖を隠すように笑った。
「若いのに古い映画知ってるな。お前クリント・イーストウッドには見えないぜ」
「大ファンなんだ…… このシチュエーションなら言うだろ普通」
 男は苦笑いした。
 映画ファンなら誰でも知っている名場面に今すげー似てるんだよ、これが。で、続く台詞はこれ。
「どうする、俺も夢中になっちまって何発か数えてなかったんだ」
 男は今度は声を出して笑った。
「冗談きついぜ、兄ちゃん。銃が違うだろ。映画は6連発のリボルバーだがそいつはベレッタだ」
 ベレッタM84はイタリア製の傑作中型オート拳銃だ。曲線を主体とした美しい銃で携帯しやすいコンパクトなボディのくせに13連発を誇っている。だいたいオート拳銃は弾が切れるとスライドが後退したまま止まるので弾切れは一目瞭然なのだ。今のは単なるギャグだ。
 俺は男に笑い返すと軽くステップしてショットガンを蹴り飛ばし男から離した。
「君!風見君」 
ここにきて警官が到着して俺を呼んだ。ここは駅前ロータリー。いくら田舎とはいえ駅前に交番くらいはある。何やってんだよ…… あんたら……
 遅れてきた交番勤務の警官は俺の怪我の有無を確認し後で本署に顔を出すよう指示した。
ああ、めんどくさ。天を仰いでいる俺に唯一生き残った犯人が連行されながら話しかけてきた。
「なんで俺だけ殺さなかった」
 別に手加減したわけじゃない。
「さあね?」
 男は返答に満足したのか高笑いして、やってきた救急車のほうに引っ張っていかれた。2発も撃たれたのにタフな奴。でも大抵あとから痛み出すんだよな、こういうときの傷は。
 警察署までは歩いて数分だ。その前に…… と喫茶店に取って返すと店の前に金髪の娘が立っていた。背、低いね。150ないな。でも足は長いし細……
 と視線がまた下の方に移動しかけた時、娘が話しかけてきた。
「あなた…… 何者なの?」
 ちょっと首を傾げて俺の中までのぞきこもうとする知的な表情。少しドキリとさせられる。が、俺は平静を装って答えた。
「便利屋BIG-GUN」
 この町ではちっとは知られた名だ。
「俺はリーダーの風見健。ただの悪党だ」

 わざわざ行を開けて場面転換だ。一般的な「薄い本」ならここでホテルあたりに移動済み。クライマックスへ突入という展開だ。俺的にも望むところであるがそうは問屋がおろさないし、どっかの元都知事も許さないだろう。ちっ。
 ぶっちゃけ移動距離はわずか数メートル。先ほどからの経過時間は5分たっていないだろう。俺たちは客たちが帰ってしまった「喫茶早安」のカウンター席に戻っていた。
「ああ本当だ。この町のwikiにのってる。あなた有名人なんだ」
 ラブリーなクマのストラップがついた白いスマホをいじりながら娘がつぶやいた。
 さっきみたいな大立ち回りはめったにしないが街の治安維持には積極的に協力している。やんちゃなガキどなったりチンピラどついたりだ。まさに街のヒーロー。
「喧嘩っぱやいだけなんじゃないの?ん、なにこれ」
 スマホを俺に見せる。うち、便利屋BIG-GUNのHPだ。んで俺のブログのページ。
「銀行強盗退治したら警察に呼び出されちゃった、てへ」
 と、書いてある。
「たった今更新した」
「二人も殺しといて「てへ」はないんじゃない?」
「てへは全てをうやむやにできる神の言葉だ」
「それにしても普通なら即連行じゃないの?よくのんきに昼ごはん食べてられるわね」
いろいろ聞きたがる女だ。
「まあ、身元ははっきりしてるし…… 一部始終は防犯カメラに映ってるだろうし…… 腹減ったし」
「ふーん、よろずもめ事力になります?探偵みたいな仕事もしてるんだ」
 こいつ…… 聞いといてスルーな上視線はスマホに戻してやがる。会話にならねーじゃねーか。
「んじゃさ、ケンちゃん私の仕事してくれない?」
「誰がケンちゃんだ」
「女の子にファーストネームで呼んでもらえるのは名誉なことだよ。ありがたく受け取ることだね。しかも一級品の美人さんだ」