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ヤマト航海日誌

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2016.4.3 伝説のレジェンド



三秒の画を撮るのに一週間かけるんだよ。終わったら次の三秒に一週間。その間、こっちはバカな格好のままずっとジリジリ待たされる。いつになったら準備完了となるんだか、まったくわからないんだから――たまったもんじゃなかったよね。まだ脇役の人はねえ、いいだろうと思うんですけど、ボクは主役じゃないですか。なのになんだい、やっと出番が来たと呼ばれて、さぞかしカッコいい役をやらせてくれるのかと思いきや、毎度毎度さんざ待たされたあげくがコレかっていう……あんな監督に付き合うのは二度とごめんだと思いましたね。技術があればプロってもんじゃないと思う。どんなに腕が良くたって、あんな仕事のやり方するのはアマチュアだとボクは思うな。

――と、そんなことを昔に言ったハリウッドのスターがいたなあ。大変でしたね。お気持ち察し致します。

『ブラック・レイン』ときたならば次はもちろん『レジェンド』だ。何が〈もちろん〉だ、ふざけんな。あれは誰もがカネ返せと叫ぶラズベリー映画だろうが――って、いやお待ちなさい。そりゃあ左右をカットしたVHSのビデオで見たらこれはなんだと思うでしょうが、あれはそもそも家のテレビで見ちゃいけないもんなんだよお。おれはここでたびたび書いてる下妻にいた最後の頃に、『セント・エルモス・ファイヤー』を見たのと同じ吉祥寺の映画館で、土曜の夜の特別オールナイト、リドリー・スコット四本立て、『エイリアン』『ブレードランナー』『レジェンド』『誰かに見られてる』とまとめて見たのよ。眠かった。正直、『レジェンド』なんていうのは見ないで寝ちゃおうかとも思ったけど、でも実際にあの場にいてあの映像を目にするとねえ。眠るなんてもったいないこととてもできない。入場料だけで言や、一本あたり五百円だったんだけど。

しかしあらためていま思うに、なんであんなの『いい』と感じて見たんだろう。あの日は朝から何本ハシゴしてたんだったか、絶対、あのときおれの頭は、変な脳内麻薬物質を分泌してたに違いないな。出渕裕やオウム真理教徒の脳が出してるものと同じもんだな。

『レジェンド 光と闇の伝説』は、悪魔の力で世界が闇に閉ざされてしまう物語だ。これに平凡な若者が光を取り戻すために戦士となって立ち向かう――って、それと『ヤマト』となんの関係があるのかって? それを聞かれると困るのだけど、男なら察してくださいミスター・デッカード。話のスジがメチャメチャと言えば『ブレードランナー』だって似たようなもんだが、何が違うとああなるのかね。

やっぱり、主人公かなあ。監督よりも俳優かなあ。あれがあまりにバカ丸出しなのがいかん。『栄光の彼方に』で『爆笑!? 恋のABC体験』なのがいかん。

おれはだいたい古代進みたいなやつは嫌いなんだよ。ああいうのが〈オスネコ〉のパイロットでクルーズ・コントローラーなんて、冗談じゃねえと思うんだよ。ボンクラ男がケンカは嫌いと言いながらボクシングやる映画とか、虐殺大尉が殺した男の妻子のために帝国主義と戦う映画は割と好きなんだけど。

『レジェンド』。あれは、子供に見せるつもりで企画し気鋭の監督に依頼したところ、その監督が気鋭を通り越したとんでもないセンボンノッコで、『子供向けの映画だろうとオレが手なんか抜くものかプロの仕事はこうだこうだ』と腕をふるってしまった結果、まるでアマチュアの自主制作映画のようなフィルムが出来てしまったという映画だ。脳が正常な人間ならば、やっぱりとても見られたもんじゃない映画だ。

しかしいちばん悪いのは、結局、プロデューサーかもしれない。古代進も悪いのは脚本家の藤川桂介なのかもしれない。三十分の話の台本、三十分で書いてたわけでしょ。だから主役がああいうキャラになるわけで、ビデオがなくて一度見たらそれきりだった時代にはあれでよかったのかもしれない。


   *


「それは幻想だよ。〈聖エルモの火〉と同じだ。暗い空に突然現れる放電現象だ。船乗りはそれを道標(みちしるべ)にするが火はない。彼らが作りあげたものだ。物事がつらくなった時、何かが必要なんだ」


   *


というのが映画『セント・エルモス・ファイヤー』の中のセリフ。おれの『ヤマト』の第一部の題名がなんで急にこれになるかってえのもまあ、聞かれて困ることであるが、それも察してやってください。おれの表紙は〈ウインドウズ〉に付属している〈ペイント〉で毎度作ってるんだけど、最初の頃に比べたらちょっとはうまくなったんじゃないか。

プロと言えない人間がひとつの画に時間をかけて、と言えば昔、おれは都写美でどっかの美大生が作ったとかいう短編アニメを映していたのを見た覚えがあるんだけど、あれひょっとして『SPOOKTALE』ってえやつじゃあないかしらん。幻想的でちょっと気味の悪い感じの、ああいう場所でああして見るには「へえ」とも思うものだったけど、伝説にしといた方が良さそうな……記憶では1999年の暮れだったと思うんだけど、もう少し後かもしれない……。

ってまあ、なんだかそういうものを見たっていうだけのことで、違っていたら例によってごめんなさいですけどね。

〈エルモの火〉とは放電だ。そう言ってはいけないものだ。それは青いスカーフだから。人が心の拠り所にするものだから。おれはこの投稿をたぶん続けられないだろう。これは敗けるとわかっている戦いだから、最後までは行けないよ。おれが死んだら代わりはいない。それはとてもいいことだとソレイホ刑事は言うだろう。

キモつま野郎が正義ヅラして「それ、違ってます。」なんて言うのに本当に正しいことがあってたまるか。『2199』は本当のプロが作った作品だから、安心して見れますね。〈ヤマト〉が必ず最後に勝つと見る前からちゃんとわかる。古代が「てーっ」と叫びさえすれば敵がみんな吹っ飛ぶとわかる。

そうです。時間が夢を裏切ることはないと槇原敬之が歌っている通りです。これがプロの仕事です。『ぶっちゃんヤマト』には男の夢とロマンがある。なんと言ってもおっぱいがある。

あーあーあーあーその通りだよ。おれはアマチュアだ。プロにはなれない。なる気もないよ。これをどこまで続けられるかもわからない。

まあせいぜい、やれるところまでやるだけさ。おれはエイリアン、法によれば――それでも誰かに見られてるという歌もある。誰かがおれを見守ってくれてる……そう信じておれはやるよ。

と、いったところでフウヤレヤレ、これでだいたい書くべきことは書いたんじゃねえかな。この日誌はこれでしばらくお休みすることにします。おれが書いてるおれの古代がこれからなんとかなるものか、まあせいぜいどうせ無理だと思いながら見ていてください。


(付記:このログは『ウジ虫』と同時。小説の方は更新し続け、『ゴルディオン』の最終話を出したのは五月初めだった)



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之