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ヤマト航海日誌

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2015.12.7. 出渕裕にイカリのカンチョウ



この日誌はしばらく休むつもりでいたんだ。いたんだけどさ。

でも前回の投稿の後でどうしても黙ってられないことが出来まして、今こうしてワードパッドを開く次第……と言っても別に個人的なことでもないんですけどね。

ええ、ただたんに、このあいだ、ケーブルTVで『2199』劇場版の、なんてったっけ、『さらばめぐりあいヤマト 哀の戦士たち』? 例によっておれはちゃんと見てないのでタイトルもおぼろなのであるが、やってやがったんだ。よくもまあ、恥ずかしげもなく不特定多数の前にさらせるもんだ。

で、おれが、その『哀戦士』を見てだね、いや、見てないんだけど、とにかくだ。見たんだよ。チョロっと。チョロっとだよ。うん。その『逆襲のデスラー』にロケットアンカーで敵と闘うシーンがあるという話をとあるヨイショ文で読んでいたんでさ。そこだけ見ようと思ったんだよ。

ロケットアンカー! ロケットアンカーですよ、お客さん。〈ぶっちゃんヤマト〉がいじらしくもそれで敵と闘おうというんですよ。どうせお代はケーブルTVの会社に取られてるんですよ。いちんちあたり二百円で、見なけりゃ取られっぱなしなんだ。ねえ。セチ辛い世の中だよねえ。だからまあ、そのロケットアンカーだけは、見てやろうという気になろうというもんじゃあねえですか。

で、録画して早送りして、見たんだ。おれが。そのロケットアンカーを。うん。その後で平原綾香の歌だけ切って他は消去したんだけれども。

ロケットアンカー、使っていたねえ。いきなり意味も必然性もなしに唐突に使っていたねえ、無理矢理に……古代が「ロケットアンカー」と叫んだときにおれはアッケにとられたけれど、劇場ではどうだったの。『なんでここで』と思った者はひとりもいなかったわけなんか。

そうなのかもしれんなあ。『2199』をカネを払って見に行く人は、お嫁さんに会いに行ってるだけなんだろうし……けれどもおれはそこだけ見たんで見ちゃったんだよ。ロケットアンカー。うわはは。そりゃあ無理ですよ。出渕裕にロケットアンカーまともに使えるわけがねえとわかっていたけど、ありゃなんなんだか……。

で、この日誌、おれはもうしばらく休むつもりでいたけど、今日はひとつ、その話をしてやろうじゃねえかというワケなのです。

〈ぶっちゃんヤマト〉は絶対無敵艦だから、ロケットアンカーは無用の長物のはずである。古代が「てーっ」と叫びさえすりゃ百万隻が消し飛ぶのに、ロケットアンカーの出番があるのか。

とりあえず、それは言わない約束にしよう。よくわからんが『逆襲のデスラー』は、〈ヤマト〉より強い船と〈ヤマト〉が戦う話であるらしかった。どうせそいつは『劇場版パート2』なんてのがもし作られたら同型艦がわらわら出てきて、パルスレーザーでパパっと殺られるに決まっているが、今回だけは〈ヤマト〉よりも強いのだ。そういう設定だというのは、おれもまあ大人ですからゆずって認めてあげましょう。

〈ヤマト〉よりも強い船! まともにやり合っては勝てない! これをひっくり返せるものがあるとしたら――そうだ、ロケットアンカーだ! ロケットアンカーを武器として使うのだ! それでこそ〈ヤマト〉! ボクらの〈ヤマト〉! なのに出渕は乗り気じゃないって? 木星で錨として使ったからいいだろうと言っているって? ふざけるなあ! ロケットアンカーを武器にしない〈ヤマト〉はボクらの〈ヤマト〉じゃない! ロケットアンカー出さんならDVDは買わないぞおっ!


「と言うオールドファンもいるんですよ、出渕さん。ここはひとつ……」


とかなんとか、バンダイと広告代理店に言われてシブシブ脚本に書き加えられでもしたんだろうか、あのロケットアンカーは。使やいいんだろ使やあ、って感じのいかにも投げやりな使い方だが、画だけを見れば〈ヤマト〉の内部でギャンギャンと鎖のリールが回るとこだけカッコいい。そのカットだけでごはんが三杯食えるのはおれも認めよう。どうもご馳走様でした。

箸が止まってしまうのはウルトラマンがすでにやっつけた怪獣をただ爆発さすためだけにスペシウム光線を放つがごとくにロケットアンカーを使うそのやり方だ。敵の巨大戦艦は映画の前半部分ではさぞかし強かったのであろうが、クライマックスでは〈ヤマト〉にただ一方的にボコられるだけの船になっていて、「な、なぜだーっ!」と叫んで逃げる。そこで古代が「逃がすな、ロケットアンカー!」と言って、錨がバシュンと飛びだしてもうボロボロの巨艦に刺さり、〈ヤマト〉は〈ハイジのブランコ〉のようにぐわーんと振られて敵の前へ。正面からドカンと主砲を食らわせてズウォーダー艦(なんだろうな)は木っ端微塵……。

『逆襲のデスラー』を見てない方に説明するとそのように終わる(親切でしょ? これであなたはくだらん映画を期待して見ないで済む)のだが、おいおい、ちょっと待てえな。

まず何よりもすでにもうヘロヘロの相手にただトドメを刺すためだけにロケットアンカー使う了見がいただけません。それが男のすることですか。アタシはアナタをそんなふうに育てた覚えはありませんよ。

これじゃあんまり、〈黄門様の印籠〉ではありませんか。よく、帰国子女の人とかが『水戸黄門』を初めて見て、八時四十五分に一体これはなんなのとアッケにとられる話があるそうですが、人生ラクありゃ苦もあるもんだ。教えて〜、おじいさん〜、みんなどうして必勝技をちゃんと有効に使おうとしないの?

あっしは疑問に思うんですがねご隠居。〈ぶっちゃんヤマト〉は鎖のブランコでズウォーダー艦の前に出ますね。真正面から主砲を浴びせる――これも変じゃありませんかね。相手の方が何倍もほんとは強い設定なんでしょ? 相手の方がデッカくて、強い砲を持っていて、装甲だって厚いんでがしょ? だったら、間近で向き合って、撃ち合ったなら殺られるのは〈ヤマト〉の方じゃねえんですかい。

しかしもともと、そいつを追う立場だったわけなんですよ。敵の方が〈ヤマト〉に尻を向けてたんです。だったら、その肛門に、浣腸してやりゃよかったんじゃないでしょうか。主砲で敵のエンジンノズルめがけてドーンと浣腸する……これなら、いっくら敵の方が大きくって強くても、〈ヤマト〉は一発で勝てるでしょう。それができるいい位置にせっかくつけていたというのに、なんでわざわざ敵の前にまわろうとするか。

相手の方が格上ならば、これは決してやっちゃいけない手に思えるが、ちゃいますか? せっかくもう勝った敵に逆転敗けする自殺行為……ってまあ、『水戸肛――黄門』や『ウルトラマン』と同じでたとえ気づいても決して言っちゃいけない話なのかもしれんが……。

帰国子女には血液がカツオのダシをベースにしている者の気持ちはわからない。うん。でも、わかるよ。『水戸黄門』は人情話が米のごはんで、乗っけるのは毎日食べて飽きない水戸の納豆がいいんだ。『2199』は古代が「嫁のないやつぁオレんとこに来い。見ろよ抱き枕、添い寝シーツ。月賦でなんとかなるだろう」と歌う話がごはんであって、ロケットアンカーはおかずのウインナソーセージがタコの形をしてるとか、その程度のものなんだろ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之