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ヤマト航海日誌

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2019.1.23 神よビーメラのために泣け



『ヤマト2199』はDVD五十万枚の大ヒットと言われるが、バンダイがそう言ってるだけ。『ガンダムUC』とか『オリジン』とかはその三倍売れてるし、『艦これ』だのなんだのかんだのは五倍売れてるし、『ラブライブ』だの『アイドルマスター』だの言ったのは十倍が売れている。『2199』が五十万と言うのは『ヤマト(1)』をリメイクしたらどんなクズでもそれくらいは売れると言う最低の数字でしかない。赤字にならなかったとは言え、期待値を大きく下回る結果だったのは誰にもわかる――そんな話を以前書いた。

で、そんな『2199』を最近あらためて見てみた話を書いてきたけど、やっぱりねえ。オリジナルをなぞっている第8話まではどうにか見れるが、その先がいけない。9話10話がキツくって、11、12とどんどんツラくなっていくのが……。

ストーリーがイカレてるのは許すとして、岬百合亜と原田真琴がとにかくイタい。そして『ヤマト』になければいけない大切なものを失くしている。特にそう感じるのは発進のときで、ヤマトのクルーは人々から「どうかお願い」との声をかけられる一方で、「お前らだけ逃げるんじゃねえだろうな」と言われながらに胸に手を当て乗艦せねばならないのに、街には人の姿もない。なんだか全員、朝から字幕ばかりのテレビにかじりつく夜光虫と言う感じで、人が寝静まっている深夜にコソコソ船出する感じ。

ここで「なんかなあ」と思うわけで、おれは思うしオールドファンはみんなやっぱり思うんじゃねえの。「これがセカイ系ってやつか」と。

ストーリーがイカレてるのは許すとして、岬百合亜と原田真琴がとにかくイタい。おれも地上波放映当時、このイタみに耐えられなくて視聴をやめたつもりでいたけど、あらためて見ると実は違うな。このふたりはもちろんイタいが、もっと良くないやつが三人。

沖田と真田と古代とが隠しサティアンの三悪人で、DVDが売れなかった。オールドファンがソッポを向いた最大の理由がそれじゃないかな。誰もそうは言わずに「旧作まんまなのがいかん」とか、「旧作通りでないのがいかん」とばかりに言うが。

『2199』を悪く言う者はいろいろと悪く言う。萌えキャラがイタい。話がチート。ガミロイドにサルガッソーに潜水艦に妖術攻撃、イズモ計画に宇宙パナマ運河と、いろいろ考えているつもりなのかもしれないけれど全部が同人レベル。庵野秀明の劣化コピー。『カウボーイビバップ』だとか『タイガー&バニー』だとかは一話一話がおもしろいけど、『2199』は敵が「弱い」と言うよりも、頭が悪すぎるから、チート以前に〈ヤマト〉が敗ける気がしない。「メ号作戦は陽動」だとか、「先に撃ったのはどっち」とか、「ガミラス内の人種差別」「波動砲で宇宙が裂ける」「ガミロイドは電気羊の夢を見るか」といった話になんの意味もなく、「中原中也をガミラス人は知っているか」と聞くのと同じようにタワケがたわごとヌカシてるだけ。最後まで見ると案の定、全部が全部投げっぱなしで何ひとつ答なんか出せてねえじゃん。そりゃ出るわけないけどさ。だからおもしろくないんだよ、と。

『2199』を悪く言う者はそんなふうに言う。『2202』はまんまそれを受け継いでるが、「中原中也」と言わないだけマシであるのかそうでないのか。ともかくそんなふうには言うが、実はいちばん悪いのは沖田と真田と古代じゃないか。おれが今、あらためて見てそう思うのだ。

オウムのトップ3を指して、「麻原が沖田、村井が真田、上祐が古代」ってのは誰もが言ってきた。それをわざわざ出渕のやつは、まんまそっくりに描きやがった。それがいちばんいけなかったのではないか。

沖田は〈メ号作戦〉で、自分を信じてついてくる者達を騙して捨て駒にする人間に変えられた。なのに〈ヤマト〉の乗員には、「信じるのだ」「信じるのだ」と連発する。

一体なんでこんな男の言うことを信じなければいかんのだ。

と、そういう話にならんのか。オリジナルの沖田は決してこんなキャラではない。出渕裕によって麻原そっくりに変えられた結果こうなったのだ。

次に真田。オリジナルの真田も決して、〈コンピュータ人間〉と呼ばれるような人間ではない。だが出渕裕によって、リチウムイオン電池みたいなものを食べながら「無駄なカロリー摂取は愚かな行為だからね」などと言うキャラに変えられた。

村井秀夫だ。信者にまったく同じことを言ってパンの耳だとか、オカラか何かを固めたようなもんばかり〈修行食〉として食わせていたオウムの〈科学技術省長官〉。もっとも村井は自分自身は下の者達が見てない場所で好き放題に高価なものを食い散らかしていたと言うが。

真田も他が見てない場所で、合成でないキャビアとかタラバガニとかの高級缶詰食っちゃったりしてんじゃねえのか? 地下都市ではそれ一個が同量の黄金(きん)に相当するような。村井は麻原と上祐の間に挟まれて目立たぬが、この男こそダースベイダー。サリン製造と坂本弁護士一家殺害の要(かなめ)となった人間であり、この男がいたからこそオウムは悪を実際にやれた。村井なしにはただの口だけ集団だったかもしれない。なんで真田をここまでオウムのナンバー2そっくりに作り変えるのか理解に苦しむ。

で、古代は言わずもがな。オリジナルではさんざっぱら命令違反を繰り返すが、第一話から「触るな」と言われたメカに勝手に乗って飛び出すほどに無軌道では実はなかった。やはり出渕裕によって、上祐史浩に近づけられてる。

スレ違っただけの他人を「キミ」と呼んで詰問を浴びせ、病院にいるケガ人を無理に押しかけてまた問い詰める。そのくせ自分は「触るな」と言われた軍の最高機密メカを勝手に動かして壊し、汚染された地面の上で島に「この恰好じゃ、救援が来るまでもたないぞ」と言われてもなんのその。

第一話だけでこれだけのデタラメをやり散らかす。自分の立場や状況を判断する能力や、結果を予測して行動する能力を欠落させた人間なのがアリアリとわかる。

サイコパスだ。伊東と同じく〈良心〉や〈人を思いやる心〉を持たず、他をあざ笑い自分を憐れむ。西崎義展がそもそもそうであったためにオリジナルの古代は元々そうであったとも言えるが、しかしもはや完全に、上祐史浩と同レベルの広告代理進行班長。

古代と伊東は五十歩百歩で、伊東が五十で古代が百だ。市橋達也がサイコパスなら、市橋達也をネチネチ責める検事もまたサイコパス。しかし最も邪悪なサイコパスなのは市橋達也を泣いてかばう人権弁護士であると言う、それが〈ぶっちゃん古代〉であり、そんな現代社会の歪みが『2199』と言う狂気の作を生み出した。

おれが地上波放映を途中で見るのをやめたのは岬百合亜がイタいから、と自分で思っていたが違った。本当の理由はそれだ……でもやっぱり、ホントのホントにいちばんヤなのは中原中也?なんて話をこれまでちゃんとマジメにしてこなかったのが、最近になって書いてるのは状況が変わってきたからだ。でも枕が長くなるなあ。ええと忘れるとこだったけど、ビーメラ星の話は前回どこまでしたんだったっけ。
作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之