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「じゃ〜なんで僕と寝たんだい」

乾燥した空気が僕の口をカラカラにする。
雨なんてもう5年は降っていなかった。
先程の戦闘で壊滅させたコミュニティーからは、
めずらしく大量の物資が調達でき、
当分は食べていけそうだった。
彼女は戦利品の中から支給された缶ビールを一気に飲み干す。
しかし飲み終えた後の彼女の手には、サビた缶の粉がびっしりとついていた。
その粉を気にせず払い落すと、彼女はこちらをしっかりと見据えて話し始める。

「戦争という状況下で、パートナーとして生き残るには、
弱い面も辛い事も全て見せ合った、深い信頼関係が必要なんです。
その絆は、時として銃より強い武器になる。
あの日の夜の経験で、お互いの絆が強化されたから、
私は今日の戦闘で、あなたを救う為に全力を掛けた。
そしてあなたも、私の指示に全幅の信頼をよせられた。
どちらかが少しでも疑い、迷いが生じたなら、
私達は生き残る事はできなかったでしょう。
誰も信用できない、仲間ですらいつ裏切るか分からないこの世界で、
全幅の信頼を寄せ合えるパートナーの存在が、どれほど強力な武器になるか、
あなたにだってわかるでしょ」

割れた窓ガラスからは、強風に巻き上げられた砂が舞い込み、
部屋の隅々にまで堆積していた。
僕は口の中にまで入り混んだその砂を吐き出してから、彼女に問いかける。

「それじゃ君は、自分の全てをさらけ出す行為も、それにより生まれた絆も、
自分が生き残る為に利用していたというのか」

「例え利用したと言われようと、それらは決して偽物じゃないわ!
全て正真正銘の私だった」

強い意志を感じさせる彼女の目は、砂に覆われたこの世界で、
水を湛えた湖の様に見えた。
しかし、その瞳に躊躇する事なく僕は本題に切り込んだ。

「そうか、それじゃ〜聞くが、もしその絆が、じゃまになったら。
つまり、生き残る為に、僕を見捨てる必要が生じたら、
君は僕を、見殺しにするのかい?」

一瞬の沈黙の後、
彼女はその深い湖の様な目を僕から逸らし、
外に広がる砂漠へと視線を移した。
「その答え、聞きたいの?」

僕は一瞬迷い、首を縦に振る替わりに、こう言った。

「君が、自分が生き残る事しか考えていないのなら、
それが君の最終目的なら、その為に全ての行動が行われているのなら、
答えは聞かなくてもわかる」

その言葉に彼女はこちらを向く。
傷だらけの拳が、強く握り締められていた。

「あなたの言う通りよ、
それが私の最終目的よ。でもそれがなんだっていうの!?
みんなそうよ、みんなみんなそうなの、
生き残るのに必死なの、
ここに来た以上、あなただってそうなはずよ!
でも私があなたの前でさらけ出した私は、本当の私よ、
仮に私があなたを見殺しにしたとして、
私が傷つかないとでも思う!?
きっとすごく辛いわ。
あなたを失うなんて、今想像しただけでも心が握りつぶされそうよ、
だけど、その苦しみを乗り越えていかなきゃいけないの!
今までも、沢山沢山、乗り越えてきたの」

「なんて勝手な!、そして俺は死ぬわけか。
俺は君にとって利用価値がある間だけ、生きていられるってわけだ」

「そういう言い方しないで!」

「そう言ってるのと同じじゃないか!」

「そうだ、俺がさっき言った状況が逆転したらどうなるか、
つまりは、君を見殺しにすれば俺は生き残れる。
そうなった時、俺はどうするか教えてやろうか」

「どうなんだよ!聞きたいかその答えが!」

彼女は下を向いてずっと黙っていた。
僕もそこまで言ってしまうと、次の言葉もなくずっと黙っていた。
そこには、不思議と静かな沈黙が流れていた。

「君は、その答えを知っているんだよな、
だからこそ君は、俺を選んだんだから」

「言ってあげよう、俺は君を見捨てる事はできない。
例え自分が死ぬ事になろうとも、君の命を助けるだろう。
君はそうした愛を提供され、そしてその屍の上に立っているんだよ」

「そうね、あなたの言う通りだと思うわ、だけど私は、
その屍達に、屍になってもいいと思えるだけの物を提供しているのよ、
だからみな、私の為に死んでくれるの。
私からそれを強要した事は一度だってないわ」

「君のそういう所が、頭がいい分余計悪質なんだよ」

「あなたの言う通りかもしれない、
でも私は屍達に最高の物を提供する為に、誰の前でも全力だった。
私は、私の全てで、彼らにぶつかっていったのよ。
どんな相手であろうと、私は一度も手を抜いた事なんてない!
そしてみんなみんな、そんな生身の深い触れ合いに飢えていた。
だから私は彼らの望む物を提供したの。そうしたら、みんな、
進んでこの世界に移住してくれたわ。
私に出会わなければ、彼らの多くは、
きっとそうした深い幸せを知る事なく、死んでいったのよ。
彼らだって、私に出会えて幸せだったと思うわ。
みな後悔なく死んでいったわよ! 理想の死に方じゃない!」

それを聞くと、僕はそっとほくそ笑み、静かに彼女の方へ歩み寄った。
静かに、しかし一歩一歩、確実に。
そして彼女のすぐそばまでくると、その耳元でささやいた。

「そういうのを自分勝手っていうんだよ。
僕はね、今の話に出てきた男達とは違うんだよ。
いいかい、さっき言った事も全部、ウソだ。
僕は自分が死んで、君がまた他の男達の物になってゆく事に、
耐えられそうにないんだよ。
君には、僕だけの君でいて欲しいんだ。僕だけの物にしたいんだよ。
そして今ここで、君を殺してしまえば、君は永遠に僕だけの物になるんだ!」

そう言うと僕は彼女の首へと手を伸ばし、そして一気に締め上げた。

作品名:レベル7 作家名:deadstock