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フリーソウルズ

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幌のない骨組だけの荷台に煤けた男たちが十人前後乗っている。
日焼けした丸顔の男と眼帯をした男が荷台から身を乗りだし裕司に話しかける。

丸顔男 「緑川じゃないか、無事だったか」
眼帯男 「磯村と一緒じゃなかったのか?」
緑川  「僕が磯村ですけど・・・」

驚いた顔を突き合わせて、やがて笑い合う丸顔と眼帯。

髭面男 「早く乗れ!」

髭面の怒鳴り声に圧されてトラックの後ろに回りこむ緑川。
荷台の後ろにとりつく丸顔と眼帯。

眼帯男 「磯村はどうなった? 磯村上等兵はどうなった?」
緑川  「磯村です、僕が磯村です」
丸顔男 「お前、頭やられたか?」

”敵襲!”と荷台の誰かが緑川の背後の空を指さし大きな声で叫ぶ。
振り返る緑川の目に眩しい光が映る。


 ◇    ◇    ◇    ◇


バイクが近づいてくる音。
その眩しい光はバイクのヘッドライト。
バイクを運転しているのは革のジャンパーを着たカツである。
バイクを裕司の前に停めるカツ。
裕司の退路を断つようにノブが後方にバイクを停める。
土手の上の幅の狭い道ゆえ、逃げ場のない裕司。

ノブ  「こいつです。椿谷裕司って野郎です。調べました、ネットで」
カツ  「おい、お前。よくも俺たちをコケにしてくれたな」
裕司  「何のことですか?」
ノブ  「ゆうべコンビニのことだよ」
裕司  「コンビニ? ああ、あれ・・・」
ノブ  「それと・・・」
カツ  「コンビニの件はどうでもいい。気に喰わないのは、お前が姫君に手、出したってことだ」

話が見えてこない裕司。

ノブ  「お前、七尾ひめ様に抱きついたろ?」
カツ  「俺たちはな、1年も前から姫君のファンなんだよ!」

カツとノブが揃って革ジャンの背中を裕司に向ける。
背中に、”姫君連合”とデザインされた刺繍があしらってある。
それを見て思わず、”ダサっ”と呟く裕司。

カツ  「(マジギレする)ンだとォ、もう一度言ってみろ!」
裕司  「(逃げ腰で)あの、僕、あの子と初対面だし、何の関係もないし」
カツ  「許さん! ヤキ入れてやる!」

後ずさりして一目散に来た道を逃げ走る裕司。
裕司を追いかけるカツとノブのバイク。
2台のバイクに追いつかて轢かれそうになり道の端を走る裕司。
ノブがバイクに乗ったまま竹刀を裕司の腰のあたりに振り下ろす。
身をよじって竹刀の直撃をかわすが、柔らかい草地に足を取られる裕司。
両膝が別方向に折れてバランスを崩し、土手から転げ落ちる裕司。
土手の下まで転げ落ち、顔を歪める裕司。
土手の上の道にバイクを停めるカツとノブ。
土手下の裕司に向かって叫ぶカツ。

カツ  「二度と姫君に近づくな! 今度七尾ひめ様と一緒にいるところを見つけたら、ぶっ殺す!」



スタジオスウェイド
ドラムがリズムを刻み終える。
ギターの残響音が消える。
真凛が微笑む。
ひめが自画自賛の拍手をする。



川べりの土手

裕司  「(呟く)何なんだよ、あいつら・・・。いてててて」

雑草まみれで草むらに倒れたまま、左肩を押さえる裕司。
上体を起こそうとして、痛みで顔が歪む裕司。



作品名:フリーソウルズ 作家名:JAY-TA