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釣り名人のニンジン

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「釣り名人のニンジンの、釣れない獲物」

これは本当にどうしようもない話なんだ。話半分に聞いてくれるとありがたい。
さて、何から話そうか。

そうだ。これは、ある一人の少女の話であるものであることを言わないといけないな。
この少女は周りの人間とは少し違う、変わった女の子なんだ。
どこが違うというと、まず一番目立つのはその髪の色だな。
他の人たちがきれいなブロンド色の髪を優雅になびかせているのに対して、
その少女は燃えるような赤毛の縮れ毛なんだ。
そこで、その少女はこう言われてからかわれていたんだ。
「ニンジン」とね。

「釣り名人のニンジン」

さて、少女の名前はちょっと発音するのが難しい。
たいていの人は途中でかんでしまってまともにその名前をいえないんだ。
そしてこの私も十回に一回くらいしかうまく発音することができない。
なので、彼女の名前を便宜上「ニンジン」と呼ぶことにする。
そんなニンジンには、ひとつの特技があった。
ニンジンは世界一の釣り人だったんだ。
ニンジンの手に掛かれば、小さい魚はシラス、大きい魚はなんとカジキマグロを釣ることも不可能じゃなかった。
彼女の名前を知らない釣り人は世界中を探してもいないだろうね。いたとしたらそいつはモグリだ。

そんなニンジンに、一つの話が持ちかけられたのは、ちょうど三日前だった。
ニンジンがいつも通り釣りをしていると、ある旅人がこういう話をしたのだ。
「やあ、あんたが噂の、釣れないモノはいないっていうニンジンさんかい?」
「そうだよ〜。あたしに釣れないモンなんてないのさ!」
ニンジンは胸を張ってそう答えた。彼女にはその発言を裏付ける確かな技術と経験と、実績があった。
旅人は二ヤっと笑って耳をそばだてた。
「それならさ……」

(はあ、全く。確かに何でも釣れるっていったけどさあ)
ニンジンは、ぼやきながら、釣り竿の先から垂れる、釣り糸をぼんやりと眺める。
彼女は今、ある場所で釣りをしている。
が、そこは海でも川でもない。ましてや釣り堀でもない。
そこはまるで地球の真ん中まで届きそうな、大きな穴だった。
通称「マン・ホール」
まるで巨人がその大きな口を開けているように見えることからその名前が付けられた。
ニンジンは今、そのマン・ホールに釣り糸を垂らしている。
全く。

釣れるわけないじゃん。


「地球」なんて。

作品名:釣り名人のニンジン 作家名:伊織千景