小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

地平線の向こうのボランティア

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
地平線のむこうのボランティア

「ゆとり世代」という時代に僕は育った。部活動は中学一年の時まで、バスケをやっていたけど、顧問の先生がパワハラをしたとかしないとかの問題で父兄が騒ぎ出して一時廃部になった。
 それから僕は部活動はやらなくなってしまって、代わりに国際交流協会に入った。中学の時からいくつかの言語を勉強した。
 高校の時、親にバイトをしたいと言ったら、
「バイトからずるずる高校中退になっちゃう、あなたの場合」
 と、言われ反対された。「部活動に入れ」と、言われたが、もっと何かできることがあるだろうと思い、なんとなく国際交流協会の関係の日本語を教えるボランティアをやることにした。
 自分では自覚がないのだが「いつも平坦で何に対しても感情が乏しい」と大人たちに言われる。そんな僕でも、そのボランティアは打ち込めた。僕としては熱くなっているつもりだ。
 
 大して苦学もすることなく東京外語大に入って語学を勉強した。大学の勉強だけではものにならないから常に英語の本を持ち歩いて読んだり、家では音読するか、CDを聞き流したり、暗唱したり、DVDもスクリプトをつけたり外したりという勉強法で英語を学んだ。同じ方法でフランス語、スペイン語、中国語をアマゾンで取り寄せたCDやDVDを使って学んだ。
 国際交流協会はそれを実践するうってつけの場所だ。それらの言語は日常会話程度なら皆話せる様になった。

 でも僕は大学を卒業してもどこの会社の内定も貰えなかった。
 代わりにコンビニでバイトをすることになった。その時も国際交流協会の日本語を教えるボランティアは続けていた。
 
 コンビニのバイト先で僕ともう一人の学生と二人同時に入って、二人で教育を受けた。もう一人の男は返事だけはきはきしているが、不真面目だった。しょっちゅうバイト中にメールをしたり電話をしているのだ。それでいて店長の前では優等生ぶって調子がいい。
 ある時僕は、店長からバイト中に電話をしているそうだなと注意を受けた。僕はすぐにもう一人の男と勘違いされていると気づいて否定した。でも店長に口答えをしたという事でそれから僕は風当りが悪い環境で過ごすことになった。

 店長はあまり仕事に来ないので、従業員の名前と顔が一致していない。もう一人の学生の不始末はみんな僕のものになった。
 今まで真面目で淡々と働き、ミスも少ないという周りからの評判も、店長の権力は絶対だから、皆僕に関わらない様になった。ある時僕は、本当に入荷ミスをしてしまった。それを機に僕はバイトを首になった。僕の首と同時に不始末だらけの学生は卒業し、内定も貰い立派に就職した。

 バイトが首になり、他のバイトもいくつか応募したが、前のバイトを辞める理由を毎回聞かれ、間が悪くどこも不採用になった。
 そして僕はニートになった。
 東京のど真ん中で育った僕は、どこでもいい、地平線の見える様な大きな大地で仕事がしたい、そう思った。
 日本語を教えるボランティアだけは続けていたので、僕は海外のボランティアに行く援助金をもらった。