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短編集『ホッとする話』

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 お姉ちゃん家族が帰っていくと、家は急に静かになった。お母さんも今日は帰ってこないって言ってたし、私はお姉ちゃんが持って来てくれた夕飯をいただくと忘れないうちに洗い物を終えて自分の部屋に入った。

「勉強、しなきゃ」
 前向きな気持ちで勉強をしようと思ったのはいいけど、夕方に取り込んだ洗濯物が二つある私と兄の机を占領していて、私の善行を妨げんとしている。そういえばここ数日面倒くさくて机に置いたまま放ったらかしていた。
「good grief(やれやれ)」
 
 畳んだ洗濯物をタンスに入れようと引き出しを開けた。思えばこのタンスは姉のお下がり、年の差のせいか物心ついた時から大人びて見えた姉はおしゃれで、たくさんの服もこのタンスにきれいに収められていた。ところが、そのタンスが私に引き継がれると、姉より服の量は少ないのに、これがきれいに収まらない。三つ子の頃から続く大雑把な性格が恨めしいと思う瞬間だ。

 私は机上の服を入れて引き出しを押したけど、収め方が悪く奥まで入らず不細工な見栄えになっている。もう一度押し込んでみた。するとタンスの奥に服が入ってしまい、明らかに挟まっているのが感覚で分かると私は冷ややかなため息が漏れた。
「あ?ぁ……」

 いつもの自分が情けない。
 私が小さかった頃は仕事で家にいないことが多い親に変わり几帳面な姉に細かくしつけられ、服は畳んできれいにしまいなさいと教えられたけど、その姉が嫁いで家を出るとこの有様だ。分かっているのに日ごろの業務がこなせずに服も適当にタンスに押し込んでしまい、余計に時間をとる結果になる。
「しょうねぇ」
 私はタンスの引き出しを引っこ抜いた。それから奥を見てみると、さっきスタックした服だけでなく、いらないのに無理やり引き継がれたお兄ちゃんの服も見つかりさらにゲンナリした気分になった。私はそれらを取り除き、もう一度奥を見ると、何やら引き出しに押しつぶされてクシャクシャになった紙が挟まっている。
「まだあったか」

 ここは姉の教えを守ってみることにした私は、もう1度タンスの奥に手を伸ばした。多分今これを取らなかったらこの紙は再び長い眠りに就く事は間違いないからだ。
 クシャクシャになった一枚の紙。いくら私でも、タンスは服を入れるところで誤って紙を入れることはしないし、たぶん記憶にない。いずれにしてもこの紙の居場所はここではないのだから、回収して捨ててしまおうと思い、その前に内容を確認しようと畳まれたその紙を広げてみると、私は胸の奥から上がってくる笑みをこらえることができなかった――。