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アナザーワールドへようこそっ!  第二章  【035】

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  【035】



「『わからないけど力は使える』?…………どういうこと?」


 シーナはアイリの『どうして二人が『特別招待生』に選ばれたのか?』という質問に対して、『わたしたちは『魔法』以外の『力』を持つ存在で『天才児(ニューエイジ)』とも違う存在だから』と返答。しかし、その『『魔法以外の力』についてはわたしたちも知らない。だけどなぜか使える』という説明をしたため、アイリは『まったく訳が分からないよ状態』になっている。


 それにしても。

 シーナの対応を見る限り、どうやら『神通具現化(ディバイン・フォース)』のことは言わないつもりらしい。

 そして、シーナはアイリへさらに説明を続けていく。


「つまり、今のわたしとお兄ちゃんは、自分たちが持っている『力』の使い方だけはなぜか身体が知っているというか覚えているという状態にあるけど、その『力』の正体まではわからない…………そんな状況かな?」

 と、シーナ。

「そ、そうなんだ……。あっ! じゃあさ、あの二人に出会う前に見たあの『アポロニアの森』の中で見た『赤い光』って…………あなたたちの仕業?」
「うん。あれはお兄ちゃんが出した『大きな火柱』が原因。アイリが予想していた通りよ。最初は、この『力』についてあまり知られたくなかったし、アイリのこともよく知らなかったってのもあるから本当のことが言えなかったの。だから、アイリが『大きな火柱』って言ったときはビックリしたわ」
「やっぱりっ! あの『赤い光』は、わたしの見立てどおり『大きな火柱』が原因だったんだね?
「うん。ごめんね、隠してて」
「ううん、しょうがないよ。だって会ったばかりで何者かお互いわからない状態だったしね…………あっ! じゃ、じゃあさ、その『大きな火柱』って、わたしが予想したとおり、『10メートル級』だったの?」
「うん、ぴったし!」
「やったーっ! ふふん、やっぱりわたしの目に狂いはなかったってことね」
「うん。本当、すごいよ、アイリ」
「いや~それほどでも~…………て、ちょっと待って!『10メートル級の火柱』って、それ、誰が出したの?」
「? だからお兄ちゃん……」
「ええええっ! ハヤトが出したのっ!?」

 と、アイリが目を見開いてこっちを向いた。

「こっち見んなっ!」

 とは、言えるわけはなく(当たり前)、

「えっ? あ、いや~……まあ……。あ、でも、力の加減がまだうまくできてなくてさ、そのときは、つい、イキオイよく出し過ぎちゃって、シーナに怒られたんだけどね……ハハ」
「いやいやいやいや……! ハヤト、そんな『イキオイよく』で『10メートル級の火柱』って出ないから」
「えっ? そうなの?」
「当たり前でしょっ! わたしは『火属性魔法士』だから特によくわかるけど『10メートル級の火柱』ってそうとうなもんよ。わたしでだいたい『5メートル級』くらいだし……。あ、ちなみに、同じ年で『5メートル級の火柱』出せるのは数人しかいないからね。普通はわたしの年齢の魔法士だと『3メートル級』でも良いほうなんだから。まあ、ハヤトはわたしよりも3つ年上だけど、それでも『5メートル級』の火柱を出せるのは、おそらく数人レベルよ」

 と、アイリはガーッと一気に捲くし立てて説明。

「ふーん、そうなんだ……」

 一方、俺はアイリの言っていることがよくわかっていないこともあり、気の抜けた返事で応える。

 アイリは、そんな『気の抜けた返事』を出す俺を見て、大きくため息を吐きつつ、

「はああぁあぁ~……何で、そんな普通なのよ? あのね、わたしがあなたたちの気になるところは『そういうとこ』でもあるのよ」
「『そういうとこ』……?」
「そう。あなたたちを見ていると、まるで『この世界の人間じゃないみたい』に感じるの」

「「!?」」

 こ、これは……まさか、

 気づいたのか、アイリは?

「ど、どういうこと?」

 すぐさま、シーナが俺に代わり、アイリと話す。

「だって、そうじゃない。話を聞いていると、あなたたち『魔法のことをよく知らないみたい』なんだもん」


 うっ!

 やっぱり気づくよな、そこ。

『そういうとこ』=『魔法のことを知らないみたい』……てことか。

 しかし、シーナは即答で、そのアイリの質問に答える。


「そうね。でもアイリ…………言ったでしょ? わたしとお兄ちゃんは、『南地区(サウスエリア)』出身だって」
「!?……サ、南地区(サウスエリア)」
「そう……『南地区(サウスエリア)』。わたしとお兄ちゃんがいた地区よ。あそこには……『魔法が存在しない』」


 !?

 ま、魔法が存在しない?

 そ、そうなのか? そんな場所があるのか?

 シーナは南地区(サウスエリア)と言った…………この間も、シーナは俺たちの出身エリアは『南地区(サウスエリア)』だと言っていた。

 つまり、その『南地区(サウスエリア)』には、俺たち『異世界の人間』を隠す上で、『都合の良い何か』があるってことなのか?

 シーナに早めに聞いときゃ良かった…………て言っても、それって今朝の話だし、それに、それまでシーナと会話する機会もそう多くなかったしな。

 とりあえず、ここはシーナにまかせて、話を合わせよう。


「ごめん、アイリ、語弊があるわね。より具体的に言うと…………『人間族が使う魔法は存在しない』」 

 シーナは、アイリに揺るがない自信で輝く瞳をまっすぐに向け、そう言い放つ。

「や、やっぱり、本当だったんだ…………噂には聞いてたけど……」
「噂……?」

 俺はアイリに尋ねた。

「うん。南地区(サウスエリア)には昔から『人間族が使わない魔法が存在する』って言われていたの」

 すると、シーナがすぐさま、アイリに問う。

「へーそうなんだ。わたしとお兄ちゃんは、これまでほとんど南地区(サウスエリア)からは出たことなかったから、そんな噂があるなんて初めて。ねえ、どんな噂なの?」
「え、えーとね…………まず、南地区(サウスエリア)以外の他の地区(エリア)はいろいろと交易が盛んなんだけど、南地区(サウスエリア)だけは、どことも交易を結んでいなくて、それでついた呼び名が…………『禁制地区(フォビドゥン・エリア)』」
「禁制地区(フォビドゥン・エリア)……」
「そう。そして、その『禁制地区(フォビドゥン・エリア)』である南地区(サウスエリア)からの情報や品物は一切入ってこないんだけど、でも、それは、逆を言えば、南地区(サウスエリア)も一緒じゃない?」
「そ、そうだな……」
「そうなの。でもね、不思議なことに、南地区(サウスエリア)は他地区からの輸入に頼らなくてもやっていけている…………そんな地区(エリア)なの。すると、そこで皆が口々に噂をし始めたの…………『南地区(サウスエリア)……『禁制地区(フォビドゥン・エリア)』は、何か『特殊な魔法』を使って自活しているんじゃないか?』……てね」
「……なるほど」