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ゾディアック 12~ 81、82 、83、84、85、86~

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~ 81 ~

親父から先日の乱闘を詫びた手紙が来た。
「 病気だな・・ 」私は呟きゴミ箱に捨てた。

電話がかかり、出ると病院からだった。
「 今週の金曜日から 入院が出来ますか? 」事務員が聞いた。

緊急を要すると宣告を受けてから、1ヵ月以上も経っていた。
もうすっかり忘れていたが・・
「 明後日とは急ですね 」私は言った。
「 はい、お父様が電話されてこられて・・ 」

また親父か・・ 喧しく言ったのは想像がつくが、病院も適当だな。
時間が掛かったのは、摘出した焼痕に悪性組織が検出され無かったからだろう。
ほっといてくれれば良かったのに・・ 行けばきっとモルモットにされる。
私はゾッとした・・


朦朧とする意識の中、看護師に支えられながら 私はベットに横たわった。
眩しい光が瞼に当たり、呼びかける声がしたが 聞き取れなかった。
薄ら目を開けると、窓の外はもう暗くなっているようだった。
今何時だろう・・ 今日は何月何日だ・・ もう5回目のカメラを飲んでいた。
何も考えられず、私は死んだように眠った。


カツーン・・ カツーン・・

廊下を歩く靴の音が聞こえた。
目を開けると、沢山のフラッシュライトに照らされ、寝台の上に寝かされていた。
頭や胸や 身体中にはプラグが取り付けられ、ピリピリと電気が走った。

ドックン!ドックン!ドックン!

自分の心臓の音に、今にも張り裂けそうな 極限状態の恐怖が襲った。
周りを沢山の人間が器具を手にして取り囲み、私を覗きこんで見ていた。
1人の女医がメスを手に私の身体を切り刻んだ。

ギャーーーーーーーーーーッ!!!

激しい痛みと劈く悲鳴の中、私は飛び起きた。
身体中が汗でびっしょりに濡れていた。
ハアハアハア・・ 肩で息をしながら、見回すと
私の腕に点滴の管が一本付いて揺れ、辺りは暗く静まり返っていた。

「 夢・・ リアルな、
あの女医は・・ 前世のミクだった。 人体実験をしていた 」

ふと、ベットの足元に黒い影が蠢いた。
そして小さな人影が、私の頭の方に向かってやって来た。
私は再び恐怖に凍りついた。


ダカラ・・ イッタノニ
ミテハナラナイモノモ アルノ・・

クスクス・・

白い月影に照らされて、ベットの側に金髪の少女が現れた。
布団の上に置かれた小さな手には、銀色に光るメスが握られていた。
同時に私の身体は 金縛りに襲われて、身動きが出来なくなった。


ココロヲ ダシテハイケナイ・・
ナカヲ ミテハイケナイ・・

少女は呟きながら、月光の下メスを私の目に突き立てようとした。
その瞬間、眩しいフラシュバックに包まれて
私の姿はヤツに変わった。

「 そこに答えは無いのさ 」

メスを突き立てようとした 少女の手が止まり、ヤツは言った。
「 外に切り刻んでも、相対の闇に答えなど見つからない 」

ミツカラナイ?
・・ミテハイケナイ

少女の顔は恐怖に歪んでいった。
メスを握る少女の手を掴み、ヤツは続けた。

「 見てはならない という状態がおまえの闇だ。
果てし無い時を賭けて、おまえはその闇と戦ってきた。
そもそも見える心など 最初から無いんだ・・ 」

サイショカラ・・ ナカッタ?

「 おまえの状態の光へ 」

ルシフェルが言うと、 少女の握ったメスは三日月に変わり
月光の中に、合わせ鏡のトンネルが現れて、幾つもの過去世の鏡像が映り込んで見えた。

頭を打ち抜いた軍服の女医・・ 膨大な数の切り刻まれた小さな肉体・・
阿鼻叫喚がこだまする炎の中で、呆然と座り込む少女の瞳には、その悪夢が
果てしなく映り込み続けていた。
時の果てまでも・・ 鏡のトンネルは同じ虚像を映し続けた。

「 マインドの闇は、ここから始まった 」

ルシフェルが金髪の少女を見つめると、ヤツの赤銅色から深翠色に燃える瞳が、 少女の煉獄の瞳に映り込んだ。
「 おまえのアイは何処にある? 」

パイプオルガンの美しい音色が鳴り響き・・
少女の抱くブルネットの人形とそっくりな女が、放心した金髪の少女を優しく介抱していた。
ハーブを煎じたり、音楽を聞かせたり、少女の回復を願って身の回りの世話をしていた。
しかし、この前世で 少女は回復する事無く亡くなった。
その事が、次なる来世へと彼女達のカルマを誘って行った。


オニンギョウ・・

ルシフェルの瞳を映して、少女は言った。
すると鏡の中に、ぼんやりとホログラムが映し出された。
可愛い金髪の利発そうな少女が 城の一室で何か習っている姿が現れた。
教えている女性は青いドレスを着た
二十代後半の美しいブルネットの髪をした貴婦人だった。
細いうなじに緩くウェーブのかかった髪が揺れていた。

少女の教師をしていた女性は、前世のモーリィだった。
今の姿に面影のある 細い身体、クールで静かな雰囲気は修道士の前世の面影を残していた。

相対のマインドに映る鏡には、映り込む全ての像に訳がある
ミクの訳も・・ モーリィの訳も・・
この相対世界で出逢う 全ての人間に

相対し極なる者の自らに アイを取り戻せ


~ 82 ~

目を覚ますと、人の気配がしてカーテンが揺れていた。
パタパタと慌ただしく部屋を出入りする足音が聞えた。 
隣のベットに 新しく人が入って来たようだった。

「 今日は何日だろう・・ 」意識が朦朧とする中、身体を起こすと
いきなりカーテンが開いた。

「 マリオン、びっくりしたよ。入院したって聞いて・・ 」
ナアナだった。
「 ナアナ・・ ちょっと厄介な事があってね。でも大丈夫だよ」

「 大丈夫なの?なら安心したよ。私も少し前に入院してたのよ!胃の不調で・・
マリオンもって聞いてびっくりしたよ」ナアナは椅子に座りながら言った。
「 え、ナアナも入院してたんだ。知らなかった・・ 大丈夫? 」

ナアナと私は シンクロする事が多かった。
一方に何かが起こると、片方にも連鎖的に同じような事が起こった。
物理的に離れていても、観音次元 タオの宇宙では、振動で繋がっていた。

「 私は潰瘍だったんだけどね・・ 仕事で少し無理しすぎたみたい 」ナアナは笑って言った。
「 そっか・・ 」
その笑顔は、何故かとても遠く離れて行くように見えたが
時の始まりから、もうずっと知っているような気がした。

胃腸の第二、第三チャクラは 授容の愛と自己アイデンティティの確立を促す。
インカネーショナルスター魂の目的、今 それぞれに知る時が来ていた。

カーテンが揺れ「こんにちは・・ 」声がして、コミュウが入って来た。
「 コミュウさん! 久しぶり、元気? 」ナアナが言った。
コミュウはサロンを辞め、女神島に帰っていた。
隣人との境界線をめぐる裁判が長引いて、体調を崩した父親を助けていた。

「 まあ、ナアナさんもお久ぶりです。 マリオンさんが入院されたって聞いて、驚きました 」
「 2人共、ありがとう。でも同じ日の同じ時間に同時に来るなんて・・ 凄いね 」私は苦笑した。
「 観音次元では 私達、繋がってるんですよ 」コミュウが言った。
「 クヴァイン(観音) さんに言われると リアルだね 」ナアナが笑った。