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りんはるちゃんでクリスマス話

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忘れ物 分岐



石段の途中で凛は足を止めた。
「あ、忘れ物した」
江たちも立ち止まり、声をあげた凛のほうを見た。
凛は江を見て、続ける。
「取りにもどるから、先に行っとけ。すぐに追いつくから」
すると、江は凛に向けてニコッと笑ってみせた。
「じゃあ、私は真琴先輩の家に行ってくるね」
「いや、すぐに追いつくから、大丈夫だ」
「そうじゃなくて、私、真琴先輩とおつき合いしてるから、もうちょっと一緒にいたいなー、なんて」
江は頬を少し赤らめ、照れたように笑った。
一方、凛は眼を大きく見開く。
「なっ、なんだってーーーーー!!!!!?????」
凛の怒鳴り声が静かな夜に響き渡った。
「だから、私、真琴先輩とおつき合いしてるの」
そう説明する江の近くで、渚と怜は平然としている。
凛にとっては驚愕的な情報を、渚と怜は知っていたようだ。
「今まで黙ってて、ごめんね」
「いつからだ!? いつからつき合ってんだ!?」
「地方大会が終わったぐらい」
ということは、凛が遙とつき合うようになったのよりも早くつき合い始めたことになる。
「あのやろう」
低くうなるように凛は言った。
脳裏には真琴に優しい笑顔が浮かんでいる。
しかし、あの優しい笑顔にだまされてはいけなかったのだ!
まだ高一の妹に手を出すなんて……!
「真琴ォォォォォ!」
怒りの形相で、凛はここまでくだってきた石段を駆けあがる。
「お兄ちゃん!?」
戸惑うような江の声を背に受けながら、凛は真琴の家へと向かった。





「俺だけ知らされてねぇなんて、あんまりだろ」
ボソッと凛は言った。
遙の家の居間である。
畳にあぐらをかいている凛の隣に寄り添うように遙が座っている。
あのあと凛は真琴の家に行った。
真琴はいつもの優しい笑顔で凛を家の中へと入れた。
江も少し遅れてやってきた。
凛が江と本当につき合っているのかと問いただすと、真琴はあっさりと認めた。
そのうえで、『凛には言ってなくて申し訳なかったけど、俺は本気で江ちゃんのことを大切にしていきたいと思っているから』と真剣な眼をして告げた。
その真琴の隣で江は照れくさそうにしていた。
それから、ふたりは顔を見合わせて、笑った。
どこからどう見ても爽やかなカップルだった。
凛は握っていた拳を振りあげることはせず、逆に手を開いた。
そのあと、凛は遙の家に忘れ物を取りに行くことを真琴に伝え、そのあいだ江を頼むと告げ、真琴の家を去った。
去る直前に、節度あるつき合いをしろと釘を刺そうかとも思ったが、自分だって彼女がいて、それなりのことはしているのだから、他のカップルに対してとやかく言えないと思った。それでも、妹は他人ではないので、ひどい相手なら干渉するが、相手は真琴だ、信用できるだろう。
「おまえだって知ってたんだろ、ハル」
凛はうつむいたまま、遙のほうを見ずに問いかけた。
「ああ。真琴から聞かされたし、同じ学校だからな。あのふたり、校内で隠してないんだ」
「そうか」
同じ学校であれば気づいていたかもしれない。
自分は違う学校で、しかも寮生活を送っている。
江と一緒にいる時間は短くて、その変化に気づかなかった。
しょせん妹。
でも、生まれたときから長く一緒にいて、その成長を見てきた相手だ。
それが自分の手を離れていくようで、なんだか寂しい。
「今のおまえ」
遙がいつもの感情のこもらない声で言う。
「まるで、娘が嫁に行くと決まったときの父親みたいだぞ」
「なんだそれ」
凛は顔をしかめ、そして、その顔をあげた。
遙を見た。
めずらしく笑っている。
「寂しいんだろう?」
見事、今の凛の心境を言い当ててきた。
いつもは天然で、ニブいくせに。
凛は少し眼を見開き、けれども、すぐに眼を細めた。
「そんなんじゃねーよ」
決まり悪かった。
凛は遙から顔を背けた。
「じゃあ、そろそろ行くか。アイツらをあんまり長くふたりっきりにさせときたくねぇからな」
「ふたりっきりじゃないだろう。真琴の家には家族がいる」
「そんなの、真琴が自分の部屋に江をつれこんでたら、関係ねぇだろ」
「いや、たぶん、それはない。今ごろ、真琴の家族に歓迎されてると思う」
「……たしかに」
過去に凛も真琴の家に行ったことがあるが、真琴の家族から大歓迎されて、もてなされた。
あの家はそういう家だ。
「それに比べて、うちは今、家族がいない」
遙が言った。
その両親は海外にいる。年末ぎりぎりに帰省してくるらしい。
「だから、ふたりっきりなわけだが?」
そう問いかけるように言われて、凛は遙のほうを見た。
眼が合った。
自然に引き寄せられるように、顔を近づけていく。
凛は言う。
「Merry Christmas」
「発音が良すぎるのが嫌味だな」
「なんでそうなるのかわかんねぇよ」
そう文句を言ったあと、キスをした。