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Bhikkhugatika

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善の生る木


 丘の上にただ一本生えた白い樹木。俺は丘を歩いて登り、その樹木を眺めている。木漏れ日の光が俺を照らすが、俺はそれには関心がない。ただ彼女を見に来たのだ。
 黄金の光は彼女を包み、虹は梢の上を渡って海にかかる。海は、さざ波の音を彼女に聴かせ、風はきらめいて香る。彼女の幹は、雪のように白い。身勝手な鳥につつかれたのだろう、そこかしこに傷跡があるが、それらは彼女の勇気によってすっかり癒えている。驚いた信念である。枝ぶりは偉観を極めている。空に向かって全力で伸び、また広げられ、幾万の葉は、陽光の力を余すところなく受け止めては、清らかな仁慈を放っている。
 いやはや、美しい樹木があったものである。彼女は、この自然に生えた一本の、善の生る木に相違ない。俺は彼女の総てを知りたい思いに駆られたが、彼女がそれを許すまいから、この思慕を告げることは断念した。
 丘からは海辺の街々が見えた。聞こえぬはずなのだが、俺には街の人々の声が聞こえたように思えた。一生涯自分と一緒に暮らしながらなお、自分が自分の阿呆らしさを理解していないのに気づかぬあの輩、他人の労苦の成果によって自らを飾りたて、自分の労苦の成果を自分自身に与えようとせぬあの不思議な方々、そのくせ宇宙が滅びんとするその瞬間にも、自分だけは滅ぶまいと悶えるのだろうあの阿修羅の眷族の、他人と自分をごまかすうつろな声がだ。
 それで俺は夢想した。遠からぬ日、彼らが彼女の果実を食べて、その典雅な味のために、重要なことの一切を思い出す、その日のことを。
作品名:Bhikkhugatika 作家名:RamaneyyaAsu