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サメと人魚

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出会ったころについて話してみよう



今日は鮫柄学園で、その水泳部と岩鳶高校水泳部の合同練習が行われた。
練習のあと、岩鳶高校水泳部員たちと凛は学園の近くにある店に夕飯を食べに行くことになった。
店内はすでに客が多くいて、空いている席で一番多く座れるのは五人まで。
というわけで、凛と遙と真琴と渚と怜、岩鳶高校水泳部マネージャーで凛の妹の江と顧問の天方美帆先生と笹部吾朗コーチ、というふうに席をわけることになった。
それぞれの席は残念ながら遠く離れている。
水泳の話などをしながら食べ、それから食事が終わってほっとひと息ついたころに、渚がいつもの明るい調子で聞いてきた。
「ねえ、凛ちゃん、ハルちゃん、まこちゃん、三人はさぁ、凛ちゃんが僕らのスイミングクラブに入るまえから知り合いだったんでしょ? どんな出会いだったの?」
「どんなって、別々のスイミングクラブにいたのが、市の大会で一緒になっただけだ」
「ああ、あれは凛が声をかけてきたんだ」
凛が素っ気なく回答したあとに、遙が冷静な声で言った。
「え、凛ちゃんがハルちゃんに声をかけたの?」
顔をパッと輝かせ、興味津々といった様子で渚は遙にたずねる。
「どんなふうに?」
「たしか、おまえ泳ぐの速いなって言って、そのあと、海洋生物に似ているとか言ってたな」
「海洋生物ぅ?」
「なんですか、それはいったい」
怜がメガネを押さえた。
遙は眼をチラとよそにやり思い出すような表情を一瞬見せてから、答える。
「ああ、そうだ、ジュゴンだ」
「「ええ!?」」
渚と怜の驚く声が重なった。
それから、渚は凛のほうを見た。
「凛ちゃん、初対面の女の子にジュゴンに似てるって言ったの!?」
「ジュゴン……、美しい……とは言えません……」
怜が眼を伏せてひとりごとのように言った。
一方、渚に鋭く聞かれた凛はあわてる。
「違う! オレはそんなこと言ってねーよ!」
「じゃあ、なんて言ったの?」
「それはね、渚」
真琴が助け船を出すように優しい声で話に加わってくる。
「凛は遙に、人魚みたいだなって言ったんだよ」
そう、あのときも真琴は遙のそばにいたのだった。
だから間違いのないことだ。
渚と怜は一瞬沈黙した。
それから、言う。
「ナンパだね、凛ちゃん」
「ナンパですね、凛さん」
「ちッ、違う……! オレはそんなつもりで言ったんじゃ……ッ!」
凛はナンパ説を否定する。
顔が赤くなっている。耳まで赤い。
その顔を隠すように凛はうつむき、さらに手をテーブルにバンッと乱暴に置いた。
勢いよく立ちあがる。
「帰る!」
そう宣言し、凛は身をひるがえす。
が、直後、ハッとした様子になって、またテーブルのほうを向いた。
財布から紙幣を取り出し、それをテーブルに叩きつける。
それから、また身をひるがえし、去っていく。
残された四人はしばらく無言でいた。
沈黙を破ったのは遙だった。
「……可愛いよな」
「「「えっ」」」
驚いた三人の視線を集め、遙はいつもの無表情で言う。
「ジュゴン」
それを聞いた三人はなんとも言えない表情になって固まる。
一番最初に動けるようになったのは渚だ。
「えっと、ハルちゃん、凛ちゃんはジュゴンに似てるって言ったんじゃないよ?」
「まあまあ、渚、いいんじゃない、ハルはジュゴンが気に入ってるみたいだしさ」
「美しく……はないですが、遙先輩がそのほうがいいのなら、僕もそれでいいです。でも、なんとなく、凛さんが可哀想な気もしてきたんですが……」
口々に言う三人をよそに、遙はあくまでもマイペースで、今度ジュゴンの木彫りを作ってみよう、と独り言をもらした。












作品名:サメと人魚 作家名:hujio