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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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不倫は別れの時女性を泣かせない

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還暦を迎えようとする宏は過去に何人かの女性と関係をした事がある。一人を除いては相手の女性を別れ際に泣かしたことは無かった。付き合う時には妻がいる事を打ち明け、どちらかが別れ話をしたら訳を訊かず別れようと約束したからであった。
 宏はどちらかと言えば、女性の喜ぶ顔が見たいだけなのである。ブランドの洋服をプレゼントした時の顔。ディナ-のフルコースの食事の時の満面の笑み。そんな時の顔を見るだけで宏は癒されるのだ。妻にもそのような事はするが、妻の歓び様と、付き合い始めたばかりの女性の表情は全く違っていた。
 真理もそんな1人であると宏は感じていた。まだ34歳であるから、25歳ほど年の差があった。彼女には夫がいた。銀行マンである。子はいないが、年を考え産むかどうか迷っていると言った。彼女自身証券会社でフルタイムで働いていた。
 宏はネット証券に切り替え始めていた。整理のために店に寄ったのである。ほとんど男性が応対するのだが、事務手続きなので真理が応対した。このところの株高に乗って、保証金やら何やらで、20000万円くらいの金額が口座に振り込まれることになった。
 初めて見る真理に
「食事でもいかが」
と誘った。真理は断った。
「お引き受けしたら」
店長が真理に言葉をかけた。
「セクハラですよ。店長さん」
「顧客を引き留める業務命令です」
店長は笑いながら言った。冗談だと真理に合図したつもりだったのだろう。
真理はその言葉をまともに受けた。
「解りました。今晩でも」
「本気にしますよ」
「はい」
その答え方はいじらしいほどはにかんでいた。
「店長こんばん彼女お借りします」
「オーケー」

ホテルのラウンジから夜景が見えた。すぐ近くに川が流れ、そのアーチの橋には緑と赤のライトが点灯していた。
「9時になりますね。とても速く時間が感じられたわ。こんなの久しぶり」
「楽しい時間だったてことかな」
「はい」
宏はまるで高校生の様な真理の返事が気に入った。
宏はワインを飲んでいたが、真理はアルコールは受け付けないと断っていた。帰りは宏の車を真理が運転してくれることになった。それでは真理はどうやって帰るのか尋ねると
「今日は仕事ですからタクシーで帰ります」
と言った。
ガレージに車を停めた。
宏は車代としてあわてて財布から5000円札を真理に渡そうとした。
「会社の経費から出して頂きますから」
「何かの足しにして」
「お気遣いなく」
真理はそのまま歩き始めた。

宏は真理に逢いたくなると証券会社に出向いた。手ぶらとはいかずいくらかの注文をそのたびにした。店長の罠にはまったようなものだと宏は解っていた。しかし、真理には今までの様に、自然体で誘う事が出来なかった。一目惚れであった。
半年ほど過ぎた頃コーヒーを運びながら
「こんばんお付き合いできますか」
と言葉をかけて来た。
「電話するからその時に」
いつものように堂々としていられなかった。何故その場で返事が出来なかったのだろうとあとになって思った。
真理は携帯の番号をメモして渡してくれた。
宏は最初に真理を誘ったホテルに決め連絡した。
真理は前回の時からは随分と変身していた。香水の香りも漂い,イヤリングやネックレスも煌びやかなものであった。
「プレイボーイのお噂知ってますから」
「今晩は本当に綺麗です」
「嬉しいですわ」
「お礼に何かプレゼントしましょう。金額にはお構いなく」
「ベットを共にしてくださいな」
「そんなことならと言いたいですが、これほど面倒な事はありません。何故」
「夫が浮気したから、お返しです」
「そう、身体の歓びだけならいつでもいいですが、心まで癒す事はぼくには出来ませんよ」
「どうしてなの」
「不倫なんてそんなものです。いつも怯えなくてはならないか、憎しみが増幅するかですから」
「知り合の男性は相田様しかいないのです。こんな事話せる方は」
「僕自身あなたと付き合いたくて、店に通っていたのですが、そこまではもう少し先になると思っていましたから、不倫は結婚まで要求したら不幸になります」
「愛情があってはいけないってことかしら」
「そこまでは言わないが、結婚は出来ないって思うことだろう。別れたいと言ったら別れられる距離を保つこと」
「相田さまは何故不倫をなさるの」
「妻を見直すためかな。若い女性と付き合いその若さを妻に採り入れ、美しい女性からはその美しさを妻に見習ってもらう」
「体を求める事は?」
「大人の楽しみごと。食事や洋服を求めるのと同じ感覚、執着しない」
「女性を品物扱いですわ」
「そう思われても仕方ない」
「お金でごまかしているからだわ」
「そうかな、ぼくは洗脳したからだと思う。生きるって時間を限定すればいいことだと思う。
別れが来るまでの時間心から愛し合えばいい。別れは死と思えばいい」
「そんな割切った事は無理」
真理は呑めないと言ったワインを注文した。
真理の頬は赤みを帯びた。
「今晩はぼくが送りますよ」
「いいえ1人で帰ります。この雨のなか体中を涙で濡れたいほど泣きたいから」
宏は真理の体を両手で強く抱いた。