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JamesMorison・『YouGiveMeSomething』


 三宅と喧嘩をした。世に蔓延る多くの喧嘩と同様に、きっかけはほんの些細なことだった。だからかもしれない。些細過ぎて謝りかたがわからなくなってしまった。謝りかたがわからない喧嘩ほど仲直りしにくい喧嘩はない。例え「ごめんなさい」と謝っても、「なぜ?」と問われてしまったら上手く答えることが出来ないのだ。
―…なぜ?ほんの行き違いさ。…これですむほど人間は単純に出来てはいない。
 よそよそしい空気が部屋に流れている。僕は悲しくなってくる。折角の日曜なのに。おまけに雨まで降ってきた。
 三宅がもそもそと動き始めた。ほんとは午後から二人で見るはずだった物騒なタイトルの映画でもセットしてるんだろうか。少しでもこの空気を払拭しようと。けれどそもそも三宅はこの映画を前に映画館で見ていた。彼女は主人公のゴリゴリした渋さにノックアウトされどっちかといえば昔の文豪ばりに細い僕に是非見せてあげようと思ったのだという。でも三宅は別に僕に筋肉や渋い魅力を求めているわけではない。ただ彼女は自分がノックアウトされたものに僕にもノックアウトされてほしかっただけなのだ。子供みたいなやつだなと思う。確かにポスターで何処か哀愁漂わせこちらを見つめるジェラール・ランヴァンの姿にはまだ映画を見ていない状態でもクラクラさせられたが。
 僕がプレイヤーの前で黙りこんだままの三宅の背を見つめていると、音楽が流れ始めた。どうやら三宅はDVDではなくCDを入れていたらしかった。
 雨音と歌が混じりあう。JamesMorisonだ。ヒット曲ばかり入ったアルバム。でも僕らはこれが大好き。
 彼は「Cause you give me something.That makes me scared, alright」と歌う。三宅じゃないかと思った。
 突然走り出して泣きだして笑いだしてキスをする三宅じゃないか。そんなの。
 なぜ僕らは喧嘩してたんだろうと考える。それは僕らが互いにクレイジーだからだ。
 …でも僕はクレイジーじゃない人間なんて信用できない。
 三宅が振り返った。やっぱり泣いていた。泣きながらふてぶてしい声で言った。
「これ、君のことじゃない?まるで」
 あぁ、僕は三宅がとても好きなのだ。

作品名:@music 作家名:川口暁