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風のごとく駆け抜けて

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「ああ、この子は私の妹の恵那。歳は22も違うけどな。私は母が17歳の時の子供なんだ。うちの母、高校には行ってなくて、16歳になると同時に結婚したんだ。で、恵那は母が39歳の時の子供。私も最初、妹が出来たって聞いた時は、信じられなかったがな。てか、恵那。お前が夕方にこっちに来るって聞いてたから、思いっきり会議を入れてしまったぞ。大和、すまんが2時間程、恵那の面倒見ておいてくれないか」

「そりゃ、別にかまいませんけど……。どうぜ、文化祭の話し合いがありますから」
葵先輩の返答を聞くと「よろしく」と一言だけ言って、永野先生は職員室に入って行った。どうも、かなり急いでいたようだ。

「じゃぁ、ジュースでも買って部室に行きましょうか」
葵先輩の提案に誰も反対する者はおらず、みんなで中庭の渡り廊下にある自動販売機に向かって歩き出す。

「ところで、恵那ちゃんはなんで最初、永野先生の娘って嘘ついたのかなぁ?」
「いやぁ、妹って言っても信じてくれそうになかったので。まだ娘の方が現実味があるかなって思ったんですよ」
紗耶の質問に恵那ちゃんが苦笑いしながら答える。

「ところで恵那ちゃんはどうやって、ここまで来たのかな? あと、なんのために?」
今度は晴美が質問をする。
律儀にも恵那ちゃんはクルっと回れ右をして、晴美の方を向き質問に答える。

「あたしと綾子お姉ちゃんの実家って此江市なんですよ。だから、最寄駅から桂水駅まで20分程電車に揺られて、駅からは歩いて来ました。本当は夕方に着いて、帰りは綾子お姉ちゃんに実家まで車で送ってもらうつもりだったんですけど……。今日、プールが休みで暇だったんで早く来ちゃいました。あと、用事はたいしたことないですよ。父が、綾子お姉ちゃんが全国高校駅伝で優勝した時のビデオをDVDに焼き直したんで、渡そうと思っただけです。あ、いけない。今、綾子お姉ちゃんに渡しておけば良かった」

恵那ちゃんの言葉に私達全員が顔を見合わせる。

「ねぇ。見てみたいと思わない?」
「ですよね。葵さん。あたしもそれ思いました」
「一生に一度のチャンス」

あれ? 文化祭の打ち合わせはどこに。
でも、私も駅伝を見てみたいので、あえて何も言わなかった。

「美術準備室にDVDデッキとテレビありますよ。多分、普通に見れるかな」
「よし、じゃぁジュースを買って美術準備室に行きましょう」
 葵先輩の一言に「はい!」とみんなが掛け声をあげ、さっきよりも早足で廊下を歩きだす。

ジュースのことはちゃんと覚えているんだ。と、笑いそうになりながらも、こう言う駅伝部のノリは好きだなと感じている自分がいた。

「それじゃぁ再生するよ。準備はいいかな」
 晴美が確認を取り、再生のスイッチを押す。

美術準備室に置いてあったテレビの周りに、私達全員が椅子を持って来て、テレビを中心に半円になるような感じで座っている。

隣の棟が日よけになっているせいか、真夏だと言うのに準備室は涼しかった。

「あたし、綾子お姉ちゃんが走っているの初めて見ます。そもそもこの駅伝の時、生まれてませんから」
恵那ちゃんが脚をバタバタさせながら興奮気味に語る。