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風のごとく駆け抜けて

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麻子が先頭を切って玄関まで行き、チャイムを押す

中から声がして玄関が開き、紗耶が出て来た。

部室で見た通り、普段とは逆に前髪の右側をピンで留めている。
ただ、服は制服からTシャツとハーフパンツと言うラフな格好に着替えていた。

誰もが次の言葉が見つからないのか、沈黙が辺りを支配する。

その間沈黙は、意外な形で破られた。
奥から声がして、また1人誰かが玄関先まで出て来たのだ。

「ちょっと亜耶。わたしのアイスクリーム食べたでしょ。起きたら食べるって朝言ったのに。あ、お客さ……あさちゃん! あれ、はるちゃん。って、みんながいるんだよぉ。なんで?」

あ、いつもの紗耶だ。
喋り方を聞いて一番にそう思う。
それと今、亜耶と呼んでいた。これってもしかして……。

「とりあえず、みんな上がってよぉ」
私が答えを言う前に、紗耶がそう言うので、みんなでお邪魔することにした。

リビングはかなり広く、20畳くらいはあるように思えた。
その広さに驚いたが、外から見た家の大きさからすると納得の広さかもしれない。

紗耶に言われて、ソファーにそれぞれ座る。
駅伝部が全員座っても、まだゆとりがある大きなソファーだ。

亜耶と呼ばれた子は部屋から逃げようとしていたが、紗耶に「お茶を出すの手伝ってよ」と言われ、逃げ切れないと思ったのか、しぶしぶお茶を入れていた。

「いやぁ、ごめんねぇ。昨夜から熱が出ちゃってさぁ。初めて学校を休んじゃったんだよぉ」
紗耶が恥ずかしそうに笑う。

きっと私達がお見舞いに来たと思っているのだろう。

「それが紗耶。今日は休んでないかな」
晴美の言葉が理解できなかったのか、紗耶が首を傾げる。

「うちら、学校から紗耶を追いかけて来たのよ」
葵先輩の説明に、紗耶は本気で理解出来ないと言うような顔になる。

麻子が一から説明を始める。
お茶を持って来てくれた亜耶がものすごく気まずそうにしていた。
それはそうだろう。

「亜耶……。ちょっと聞きたいんだけどぉ」
紗耶が普段よりもトーンを下げた声で亜耶に詰め寄る。
亜耶は逃げられないと思ったのか、苦笑いをするだけだった。

「今日、母さんが早出だったから、朝はわたしたちだけだったよねぇ。それで、わたしが今日学校休むって言った時に、『紗耶きついでしょ。私が桂水高校に連絡してあげるから、寝ときなよ』って言ってたと思うんだけどぉ」

「でも今日は、紗耶が休むって連絡、学校に入ってないらしいわよ」
「それに紗耶、今日学校に来てたかな」
葵先輩と晴美が事実を述べ紗耶を見る。
紗耶はため息をついた。

「亜耶だよぉ。それ!」

その一言に全員が亜耶を見ると、観念したのか彼女は真相を語り出す。

ここからは、推理ドラマの終わりを見るようだった。

朝、紗耶に連絡を頼まれたが、亜耶は桂水に電話をせず、自分の高校に欠席の連絡をしたそうだ。

そして紗耶の制服を着て、桂水高校へとやって来たのだと言う。
亜耶は家から自転車で通える高校に通っているため、自転車が家に置いてあると不自然だと思い、家から近いのに自転車で出かけたらしい。

桂水駅では、紗耶の自転車が分からずに徒歩で学校へ。
学校についても、席や教室が分からないので他人から見ると不思議な行動だらけだったのだ。

どうやって紗耶のかばんや、制服を借りれたのかは不明だが、なにかうまいことをやったのだろう。

紗耶が双子と知らなかったら、これは騙される。
現に、私達は誰も分からなかったし、紗耶と亜耶はそれくらい似ていた。

ただ、同じ中学から桂水に来た子達にはバレバレだったらしい。
でも、その辺は逆にネタバラシをして協力してもらったそうだ。

そう言えば、仲の良いクラスメイトとあまり会話せず、中学の同級生とよく話をしていたとさっき聞いた気がする。

「そうだねぇ。そう言えばわたしが双子の妹って話したこと無いよねぇ。それにわたし達、一卵性で本当に顔だけは似てるんだよぉ。中身は結構違うんだけど」
「だね。外見の大きな違いと言えば、左胸にホクロがあるので紗耶で無いのが私ってことくらいかな……」

「じゃぁ、さっそく脱がして確認してみまし……」
亜耶の一言に、葵先輩が反応する。
言い終わる前に、久美子先輩が頭を思いっ切りしばく。
「でも、わりと楽しかったかな」
晴美が紗耶と亜耶を交互に見ながら笑う。

まぁ、確かに解決してみればそうだが、途中は何がなんだがさっぱりだった。正直、さっきまで本当に紗耶の記憶喪失を疑っていたが、それは内緒にしておこう。