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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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黒髪

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湖面は真昼よりも明るく見える。6艇のボートがスタートを切った。本命は赤色の3号艇。インコースからのスタートであるが、4号艇の青いボートが最高のスタートを切った。黒三角の印である。3号艇は4号艇にかまされターンで遅れた。4号艇のツケマイで6号艇が2着で走った。6号艇は無印である。3着は3号艇が走っていた。多田明は4号艇からの3連単を流して買っていた。1000円ずつ20点買いで有る。他の舟券も3万円ほど買っていた。おおよその配当はオッズで解っていた。最終ターンを回って4号艇は1着であった。3号艇は6号艇のインをつき、ブイにあたってしまった。4着の2号艇が3着でゴールした。4-6-2の着順である。オッズでは5万円位の配当であった。58700円が表示された。特券であるから58万7000円である。この程度の配当金を手にする事は月に1度は有る。それだけ競艇に通っていると言うことでもあった。
 換金するために機械に券を差し込み、金をとりだすと、黒髪のロングヘアの20代の女が後をついて来た。明は勝ち逃げで帰るつもりでいた。
「おじさんご飯おごってよ」
女は声をかけて来た。よくあることだ。高額の換金したものを狙って金をあの手この手で撒きあげるつもりなのだ。酒を飲ませて抜き取る、おいろけでその気にさせ、男が出てくる。明は以前にホテルに入り、風呂に入っているすきに20万円ほど持ち逃げされた経験があった。
「これは俺の金じゃないんだ。頼まれたんだよ」
「同伴で店に入らないと首になるんだ」
女は明の腕に自分の腕を差し込んで来た。
「年は?名前は?」
「ありがとう。23歳。ゆりでーす」
「店の後はホテルって約束ならいいよ」
「マネー次第よ」
「店と込みで15で・・・」
「いいよ。月3回で15で契約しない」
明はスリムな体が気に入った。それに、いま時にしては黒髪がとても新鮮であった。   
53歳になる明には妻子があるから、それほど馬鹿なことはできないが、ギャンブル、浮気はすでに公認されたようなものだった。
 家庭を崩壊させないのは妻の忍耐と金の力かもしれない。仕事が上手く行っているので月に150万以上の収入がある。明は金で解決できる女性と遊んだ。妻と離婚する気はないのである。
 ゆりには若い男がいるだろうが、15万円の契約なら安いと思った。明はセックスは商品と考えていた。愛情は持たないことにしているのである。せめてそれが妻への償いであると考えていた。
「ギブアンドテイク。契約するよ」
ゆりは明の頬にキスをした。

作品名:黒髪 作家名:吉葉ひろし