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言の寺

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桜に似た殺意



【限りなく殺意に近い愛を 君に捧ぐ】



アスファルトですり潰された桜の残骸に
僕は欲情をする

かつての彩りをほぼに失い
雨上がりの汚汁と
排気ガスの粉塵にまぶされた
桜の一枚

「これは……桜の死骸なのだろうか……」

桜の生といえるものは……
あの枝の先端から――この足元のアスファルトまでの束の間?

なれば その滞空時間こそが
桜の人生だったのかもしれない

「散ることだけが生きること」

生暖かい青空に停滞した枝を離るが時こそ桜のはじめ
されども風に舞う時はあまりに短く

「落ちて路傍の滓となりぬる……か」

僕は足元の花びらに
君の面影をみとめて



勃起をしたよ




君に宿る美しさを
その輝かしい笑顔を

僕は

僕は

「穢してしまいたい」

君を深く愛したがゆえ すべてを失い
僕にはもう……狂気しか残っていない

ただ 美しく言うならば
このドス汚れた感情を
有り体に修辞するとするなれば

僕はひたすら純粋に
吹き下ろしの風になりたいんだ

桜の君を宙に吹かせて
春という一瞬の季節に綺羅綺羅と美しく舞わせて

路面に墜落墜ちるまでの
短すぎる瞬間を

「滅び行く君と伴に……風となって吹く」

それが僕の

僕の

『桜に似た殺意』なんだ……

作品名:言の寺 作家名:或虎