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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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依頼人、柏木多香子はおずおずと語る




「えっと、つい四日ほど前のことなんです」
美女・柏木多香子は事務所の椅子に座り、ひとつひとつ自分の言葉を確かめるように話し始める。
「私の会社の同僚で親友の柿崎智子さんが、忽然と姿を消してしまったんです」
そう話す柏木の目にはすでに少し涙が滲んでいた。
「智子さんとは同じ会社で、よく馬が合って一緒に遊んだりしていたんです。今日だって有休を利用してどこかへ旅行へ行こうって約束していたのに・・・・・・」
「彼女は姿を消してしまった、と?」
翔太郎が問いかけると、柏木は、こくん、と頷く。
「その智子さんの携帯には連絡したのかい?」
「はい。でも全然電話に出なくて・・・・・・」
翔太郎はアゴに手を当てて、うーん、と考え込む。
「それにしても、『誘拐』って単語はおだやかじゃねーな。もしかしたら何か特別な用事が入ってそれを貴方に連絡するヒマがなかったのかも」
「そんなことはありません!」
柏木はたん、と机を叩き前のめりになり翔太郎の目をじっとみる。
翔太郎というと彼女の迫力のある胸に気をとられ、目線をそっち集中させてしまう。
「お、おおう・・・・・・っ!」
「『お、おおう』やないやろ」
ぱこん、と亜樹子のスリッパが翔太郎の頭を叩く。
「あ痛って!」
「智子さんは、トモちゃんは、そういう子じゃないんです。お互いに何でも悩みを打ち明けてきたし、何かあればちゃんと電話やメールもしてくれるし・・・・・・」
柏木の目からぽろぽろと涙を流れ出す。
「ちょ、お、おい、何も泣くことは・・・・・・」
「あー、翔太郎くん、女の子泣かしたー、いけないんだー」
「それはあまり良くないね、翔太郎」
「おいおい翔太郎、可愛い子には優しく接しろよ〜」
「人でなしっ!」
「俺のせいかよ!? あと最後の刑事のヤツ、ちょっと言い過ぎだろ!」
事務所にいる面々から総スカンをくらった翔太郎は戸惑いながらも、よ、よ〜しよし、と柏木の子供をあやす感じで頭を撫でて落ち着かせる。
「あ、す、すみません、ちょっと取り乱しちゃって。え、えへへ」
優しく頭を撫でられた柏木は気持ちが落ち着いたのか花のような笑みを浮かべる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
絶世の美女の優しい微笑み。
事務所内の男連中が魅了されるのは極当然なことだった。
「では、柏木さん。話を進めさせてもらってもいいかな?」
ただ一人、美女よりも事件の興味のほうが勝ってしまっている奇人の少年を除いては。
「四日前に行方が分からなくなったという柿崎智子さん。そのいなくなったときの状況をもう少し詳しく教えてほしい」
「は、はい」
フィリップの促しに柏木はたどたどしい口調で話し始める。
「四日前、私はトモちゃ、いえ、智子さんと有休を利用してどこかへ旅行へ行こうって話てたんです。近くのファミリー・レストランで旅行雑誌をみてどこがいいかなぁ、って。それでその帰り道のとき。途中まで一緒に帰っていたんですけど、ふと、智子さんのほうをみたら、今まで私のすぐ横を歩いていた彼女の姿が突然なくなっていて」
「突然、いなくなった?」
「はい。それまで一緒におしゃべりしながら帰っていたし、目を離したのだってほんの数秒もかかっていなかったと思います。でもいきなりいなくなっちゃったんです」
柏木は膝の上に置いていた手をきゅっと握り締める。
「人間を一瞬の間にどこかへ移動させた、か。・・・・・・ふむ、なるほど」
フィリップはアゴに手を当てて思案顔になる。
「おかしいのはそれだけじゃないんです」
柏木はバッグのなかから自分の携帯電話を取り出す。
そしてその画面を事務所の面々にみせる。
「これ、智子さんがいなくなったところの写真です。何かの参考になればと思って撮ってきたんです」
そこは何の変哲もない電車の高架下の写真だった。
小さなコンクリートのトンネルになっており、壁の至る所にどこかの不良たちが描いた落書きがペイントされていた。
「ここを見てください」
柏木はそのトンネルのある一点を指差す。
「これ、ここの落書き。すごくびっくりしたので覚えていたんですけど」
それはトンネルのど真ん中。
ほかの落書きの上からペイントされた一際大きい落書き。
「この落書き、智子さんが消える前にはなかったものなんです。なんていうか、彼女が消えたと同時に現れたっていうか・・・・・・」
S.K.
白い文字でスプレーされていた落書きはそう読めた。
「S.K.・・・・・・サイレント・キーパー・・・・・・!」
翔太郎が呟いた。
「え、なんですか!? 探偵さん、この落書きの意味分かるんですか!? お願いです、もし何か知っているなら教えて下さいっ!!」
柏木は翔太郎に詰め寄った。
(・・・・・・この様子じゃ彼女はサイレント・キーパーのことを知らないみたいだ。・・・・・・どうやら本当に無関係の人間を襲うみたいだね、この誘拐犯は)
フィリップは翔太郎に耳打ちする。
「ううう、トモちゃん、トモちゃん・・・・・・」
柏木は事件のときのことを思い出したのか、その場で泣き崩れてしまった。
「・・・・・・」
翔太郎はそんな柏木をみて思う。
何も関係のない人々を何の前触れもなくどこかへ連れ去る。
連れ攫われた人間はもちろん不幸だが、その人のことを大切に想う隣人だって心に傷を負うはず。
そんな悲しい涙を平気でつくり出すサイレント・キーパーと名乗る犯罪者。
掛け値なしの悪党。
「大丈夫だ」
翔太郎は未だに泣き止めない柏木の肩にぽん、と優しく手を置く
「探偵、さん?」
そして彼女の気持ちを落ち着かせるために柔らかく微笑み、
「この街は俺の庭だ。誰一人泣いててほしくなんかねぇ。安心して待ってな」
柏木の依頼を引き受けた。
「た、探偵さん・・・・・・っ!」
柏木は眩しいものをみるように翔太郎を見つめる。
「おいおい翔太郎、何お前ばかりカッコつけんてんだぁ?」
「そうだぞ、探偵! 貴様ばかりにおいしい思いはさせんぞ!」
翔太郎と柏木の視線の間に割って入る刃野と真倉。
「心配しなくても大丈夫ですよ、お嬢さん」
刃野は柏木のほうに振り向き胸を張る。
「まぁ、超常犯罪と言えば我々の出番ですから」
その横から真倉が短い髪の毛をかき上げる。
「そういうコトです。ここはナルシストである我々にお任せください。あっはっは」
「・・・・・・刃野さん、それをいうならアナリストです」
「・・・・・・え?」
「うふふ。宜しくお願いしますね、刑事さんたち」
彼らの漫才(?)で、気持ちが明るくなった柏木は二人に優しく微笑む。
「「はい! お任せ下さい!」」
もうすっかり柏木の美しさに参ってしまった刑事二人は元気良く敬礼をした。
「よし、そんじゃとりあえず聞き込みに行くか。柏木さん、智子さんの家の住所は分かるかい?」
「あ、はい」
柏木はメモに柿崎智子の家の住所を書く。
「宜しくお願いします」
「ああ、任せておきな」
「僕はここで今ある資料から『検索』をかけてみるよ」
フィリップは刃野からもらった写真を持って部屋の奥へと入っていく。
「俺は署に戻ってもう一回事件をあらってみるぜ。真倉、おめーは翔太郎について捜査を協力してやれ」
刃野は真倉に言った。
「ちょ、なんで俺が!?」