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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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風の街の刑事さん




「おお、またやってるなぁオイ。あっはっは」
「よっ、探偵! 遊び、・・・・・・じゃなくて、聞き込みに来てやったぞ!」
翔太郎たちがいつものようにフィリップのマイペースに振り回されていると、事務所のドアが開いた。
「若いやつってなぁ元気があっていいな。あっはっは」
「ですよね〜、刃野さん! こら探偵、とっとと茶くらい用意せんか!」
入ってきた人間はニコニコした感じの中年男とそれにペコペコと頭を下げる青年だった。
「ジンさん! あとついでにマッキー」
翔太郎は来訪者たちに声を掛ける。
翔太郎に『ジンさん』と呼ばれた中年の男性。
刃野幹夫。
通称ジンさん。
この街の警察、風都署の刑事である。
よれよれの背広にノーネクタイのオールバック、片手にツボ押し器というオジサンルック。
胸を張り肩で風を散らすように歩くその姿は一介のサラリーマンとは雰囲気は違うが、目もとが垂れているのでイマイチ威圧感に欠ける。
翔太郎とは彼が制服警官やっていた頃からの付き合いで、よくこうして捜査協力の依頼にやってくることがある。
「よう、翔太郎。どうだ、景気のほうは?」
「いやぁ相変わらずっスよ。さっきもそこのチビ女に、」
ぱこん!
「ぐあっ!」
刃野との話の途中で、翔太郎は亜樹子のスリッパに叩かれる。
「だーれがチビ女じゃい! あと、私のことは可愛らしくアキちゃん☆と呼びなさい」
きゃっ、と自分で言って自分で照れる亜樹子。
言われたほうの翔太郎は当たり所が悪かったのか未だに、うおおお、じ、自覚があったのかぁ〜、などと呻いて蹲っている。
「あっはっは、どうやら相変わらずの絶好調みてえだな、翔太郎?」
「か、勘弁して下さいよ〜」
おーいてー、と叩かれた頭を摩りながら翔太郎は立ち上がる。
「こらこらこらー! 俺を無視するな、探偵! せっかく来てやったんだから我々にお茶でも用意せんか!」
突然、翔太郎の耳のすぐ横で大音量の雑音が炸裂する。
刃野とともにやってきたもう一人の青年だった。
翔太郎はいきなり耳元で叫ばれ今度は三半規管をやられて、ぎゃああっ!、と悲痛な叫び声を上げる。
「・・・っるせーぞ、マッキー! いきなり耳元で大声だすんじゃねーよ! ・・・・・・あービックリした、鼓膜破れるかと思ったぜ」
翔太郎は叫ばれたほうの耳を擦りながら抗議する。
真倉俊。
通称マッキー(本人はあまり気に入っていないらしい)。
最近の若者が好むような黒くて細身なスーツに短い髪。
顔や体の線は細く、警官よりかはサラリーマンといった風情の青年。
彼も刃野同様、この街の刑事であり、刃野の部下でもある。
「ばかめが。声が張れるのは良い警察官の証拠なのだ!」
ふん、と鼻をならし胸を張る真倉。
「それとな、探偵。俺はマッキーではない。ま!く!ら!刑事と、呼べぇぇ!!」
キーーーーーーーン。
「ま!く!ら!」のところで、翔太郎に思いっきり顔を近づける真倉刑事。
「ぎにゃあああ!」
本日何回目かの翔太郎の悲鳴。翔太郎の鼓膜に甚大なダメージを与える。
「おいおい、真倉。他所さんの家で大声だすもんじゃねーぜ?」
二人のやり取りを見かねた刃野が真倉を止めに入る。
「今日は仕事で来ているんだ、はしゃぐのもいいがそのくらいにしておきな」
「あ、すみません、刃野刑事! いやぁ、さっすが、情に篤くて男前! いよっ、日本一!」
分かり易い太鼓持ちをする真倉。彼はやや二枚舌なところがあって、こうして何かある度に上司には絶対服従のスタイルをとる。
典型的な『強いものには媚を売り、弱いものには威張り散らす』タイプ、の性格だった。
ただ、彼の場合は本音も建前も全く隠せていない、やや空回り気味の可愛そうな二枚舌なので、太鼓持ちがうまくいったためしがない。
「よ、よせやい。照れるぜ〜」
・・・・・・このような、騙され上手な刃野刑事を除いては。
翔太郎はまだ鼓膜が本調子ではない耳を摩りながら刃野と真倉のコントじみたやり取りを眺める。
「それでジンさん、仕事ってのは?」
「おお、そうだった、そうだった。実はな、またお前んトコの捜査協力を頼みてえヤマがあってな」
「俺に捜査協力? ってコトは」
「そ。また『常識じゃありえない事件』ってヤツさ」
この街、風都では通常では説明のつかない『怪事件』が多発する。
例えば、地上50階建ての高層ビルがロウソクのように溶け出す。
例えば、絶滅したはずの恐竜が街中で人を襲う。
例えば、真夏の炎天下のマンションの一室で凍結した人間の死体が。例えば・・・・・・。
鳴海探偵事務所はそういった世間一般の常識から外れた怪事件捜査のエキスパートだった。
街の小さな探偵事務所であるにもかかわらず、その手腕は風都でも高い評価を受けている。
今では警察の一部で彼らに捜査依頼を出すほどだ。
「ふふん。感謝しろよ、探偵? 本来ならお前のような一般市民には全く縁のない話なのだからな!」
刃野のすぐ後ろに立っていた真倉が無駄に高圧的な態度で翔太郎を見下ろす。
「で、ジンさん。その事件っていうのは?」
「おおい! 無視するなよ!」
自分のセリフが華麗にスルーされてしまった真倉は抗議の声を上げるが、翔太郎と刃野は構わず話を続ける。
「ここ最近、風都で発生している連続誘拐事件さ。正体不明、神出鬼没、ターゲット不特定の予測不可能な誘拐を繰り返している」
刃野は若干声のトーンをシリアスにして説明を続ける。
「日本の警察の捜査技術は世界でもトップクラスだ。特に連続誘拐事件ってのは、人間を何人もどこかへ連れ去るわけだから割と簡単にアシがつく。警察が本腰入れて捜査すれば大抵は何かしらの『痕跡』が見つけられるものなんだが、今回の誘拐事件には全くその『痕跡』ってやつが見当たらねぇ」
「それぞれが別の犯行という可能性は?」
今まで静観していたフィリップが話に割り込む。
「今まで起きた事件が、それぞれ別々の誘拐、もしくは失踪事件だったとすれば、犯人の特定に行き詰っている原因としてある程度納得が出来るのでは?」
フィリップの推測に刃野は首を横に振る。
「全く同じ時期に近い区間で、本庁の特殊班でも難解な誘拐事件や失踪事件がたまたま何十件も起きたってのか? それを偶然と捉えるほうが不自然だぜ。警察では同一犯である可能性が高いと考えている」
刃野は一枚の封筒をテーブルの上に放る。
「全く手がかりがねぇってのは正確にいうと嘘だ。その誘拐事件が起きたと思われる現場には必ずある印が残されていた」
刃野の封筒の中身は事件現場の写真だった。
その数枚の写真にはそれぞれにある共通点があった。
その現場の壁や地面に必ずスプレーで落書きがしてあったのだ。
「これが警察が一連の事件を同一犯だと考えるもう一つの理由だ」
『SILENT KEEPER』
落書きの文字はそうスプレーされていた。
「サイレント・キーパー、直訳すると沈黙継続者。完全犯罪を気取ったクソッタレな誘拐犯がわざわざ残していった、俺達への挑戦状ってわけさ」