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死の宣告

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魔人は夜行性の猛禽類が飛び立つように音もなく舞い上がる。
そして剣の及ばぬ高さにまで到達すると呪文を唱え始めた。
直接攻撃のみに頼るパーティーの苦境を察したのであろうか。
本来ならば僧侶が光の輝きで魔法の属性を察知し、速やかにその魔法に対処するところなのだが、既にこの状況で駆使できる魔法は使い果している。
この距離では剣もおよばず、長弓の名手であったシーフはもう居ない。
つまり、現状では呪文の進行を阻止する技を誰1人として有していないのだ。
中空では魔族特有の低い唸り声で闇のスペルを唱え続けた。
魔人の胸前の空間には光が零れはじめて集結し、明確な光源が形成する。
その魔法の属性に気付いた僧侶は唸った。

 僧侶 「死の宣告ッ!!


__【デセンテス】
 死の宣告。最深階層に出現する高レベルの魔物が駆使する魔族特有の魔法。この魔法を受けた被験者には死のカウントダウンがスタートし、リミットがゼロになると同時に被験者の頭上には異次元(冥府)の穴が開かれ、生命エネルギーを根こそぎ吸い取られてしまう。後には抜け殻となった遺体がそのフィールドに残されるだけである。死のカウントダウンを阻止する方法はただ1つ、その魔法を唱えた魔物を致死させるほかにはない。__


 蘇活の術も使い果たしている中で、この魔法を受けてしまえば、死を回避する見込みはない。5人が狼狽している間にも冥府の光はみるみる完成してゆく。
 駆け出しの魔法使とはいえ、僧侶が口にした魔法の名前は知っている。だが、実際に目の当りにした経験などある筈もなかった。初顔合わせの冒険で、最高レベルの魔法に立ち向かうなどという事態を想定している筈もない。
 魔法使は熟練僧侶の狼狽する姿を見て脅えてしまっている。

僧侶の予測は的中し、その不吉な魔法は完成する。
闇の光は標的をさがして高速に回転し、瞬く間に稲妻となって1人に向かった。
その光は光矢となって疾り、薙刀を振るう侍を貫く________________
                                 0:30
侍の肉体にはダメージや何らかの変化は一つも見受けられない。    0:29
ただその降りかかった死の魔法に対処する術のないことを、      0:28
侍自身も含めて全員が承知した。                  0:27
魔人はカウントが刻まれてゆくのを悠然と空中で傍観した。      0:26
  聖騎士「どうするっ! どうすればいいっ!           0:25
  僧侶 「 ぬ゛、ぅ、、                    0:24
侍は死が間近に刻み寄る状況であってもコボルドを斬り裂き続けた。  0:23
それしかなかった。                        0:22
だがスライムに喰らった右脚傷が筋肉組織にまで至ってしまっている。 0:21
治癒する隙も確保できないままに、俊敏さは失われていた。      0:20
コボルドの群れは手負いの侍に狙いをつける。            0:19
戦士と聖騎士は魔人に近づく隙も見出せず、             0:18
連携攻勢を仕掛けてきたコボルドにすら手こずる始末。        0:17
 戦士 「   。                        0:16
僧侶は最後の攻撃魔法を放つも易々とかわされて望みは絶たれた。   0:15
それを見た戦士は萎縮する魔法使に近寄ると耳打ちで冷酷に告げた。  0:14
 魔法使「 そっ、、、そんなッ!、、               0:13
下等なコボルドの群れが侍に詰め寄る。               0:12
既に感覚を失いつつある侍の右脚は踏ん張りが効かない。       0:11
腕力だけで薙刀を奮ってコボルドを叩っ斬る。            0:10
体重の乗らない刃は数刻前とは別物のように切れ味を失い、      0:09
力に頼った手打ちの薙刀は、もはや打撃の武器に成り下がっていた。  0:08
死の宣告。命に狙いをつけられる畏怖。視野が狭まりその最期。    0:07
天井から落下してきたスライムが侍の上半身に降りかかると包み込み、 0:06
ジェル体が纏わり侍の動きを封じ、そこで終わった。         0:05
完全に身動きが取れない侍に群がり切り込む牙、食い込む激痛。    0:04
4体のコボルドの重みに耐え兼ねた侍は、膝をついて崩れ落ちた。   0:03
鎧をはがして群がる牙が骨まで達し、砕き、喰い千切り、       0:02
                          ____________絶命

 死の宣告を待たずして、ハイクラスの侍がコボルドに息の根を絶たれた。
 スライムのジェル体が鎧兜の中に滑り込んで酸を吐きかけ消化をはじめる。
 屍に群がる空腹の獣群。鍛え抜かれた四肢は無造作に噛み千切られ、肉塊を咥えた獣は闇の中へ消えていく。暗闇からは食糧を奪い合うコボルドたちの甲高い喚き声が響いてきた。
 変わり果ててしまった侍の残骸は、其処此処に撒き散らされた。

 シーフに続いて侍も失いパーティーの戦力は大きく減退し、鍵の掛けられた死の部屋に幽閉されて絶望感が取り囲む。重い鍵をかけたのは克服不可能な死の魔法。再び宣告が降りかかれば侍同様に救う術はなにもない。





 NAME    CLASS  AC  STATUS   MP  SEX  AGE
 ガルシア   戦士    1   167/215  00/00  ♂  33
 ミュラン   聖騎士   3   083/105  09/32  ♂  22
 クライヴァ  僧侶    2   066/098  24/89  ♂  38
 スカパル   魔法使   4   057/065  35/58  ♂  19
 ジゾット   シーフ   1   ----/ 死  11/43  ♂  28
 助九郎    侍     3   ----/ 死  03/55  ♂  27