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悠久たる時を往く

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七. 忘却の時代



        歴史書は言うに及ばず、神々の記憶にすら残っていない空白期。


 “忘却の時代”とは、“劫火の時代”が過ぎ去ったあとに訪れた、全くの空白の時代である。
 この間、歴史書は一切存在せず、ながきを生きるエシアルル達の記憶はおろか、神々の記憶からも消え失せているのだ。
 アリューザ・ガルドにおける最大の謎とも言える。

 確かなことは、この忘却の時代そのものが六百年に及んだこと。そして、過ぎ去ったあとには、ティン・フィレイカを中心としたアル・フェイロスの中央都市は崩壊し、その痕跡すら判別がつきがたいほどに遺跡化していたこと。魔法の研究に歯止めがかかり、その大部分が失われてしまい、術やまじないのみが細々と残るに過ぎなくなったこと。またすでにユードフェンリル大陸への人間達の移住が行われていた、ということである。

 では、なぜこのような歴史の空白が訪れ、また去っていったのだろうか? しかしながらその質問に対する答えは存在しない。すべては謎の中である。
 自然の大災害、アリュゼル神族の怒り、魔導の暴走、混沌の支配、冥王ザビュールの復活――過去から現在に至るまで、さまざまな説が賢人やさらにはディトゥア神族のなかでも持ち上がるが、いずれも確固たる証拠がない。






作品名:悠久たる時を往く 作家名:大気杜弥