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つかのまの永遠†コバルト短篇集

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『王子様みつけた!』


「ここだ……」
 手にしたメモと店名表示を何度も見比べ、少女は小声で呟いた。
 そんな少女の姿に通行人が奇異な視線を向けたのも無理はない。ここは首都最大の歓楽街。それもちょっと名の知れたホストクラブの真ん前なのだ。
 そして佇む少女はどう見ても小学生。
 ただでさえそぐわない取り合わせなのに、加えて少女は明らかに日本人ではなく、金髪碧眼の西洋人なのであった。
 少女は白い頬を紅潮させ、もう一度店名を確かめた。
 〈Jail of Jewels〉と、ラインストーンを散りばめた飾り文字がライトに照らされて――はいない。ライトは消えていた。
 今は朝の九時半。微妙に中途半端な時間だ。ネオンサインもライトも消えているのだから、たぶん今は営業時間外なのだろう。
 しかしここで諦めるわけにはいかない。少女が意を決し、一歩踏み出したその時――。
 鋲打ちされた重厚なドアが開き、中から男がひとり情け容赦なく蹴りだされた。せいぜい二十代半ばの青年だ。彼は猛々しく眉を逆立て、無骨な銀のリングをはめた手で口の端をぬぐい、立ち上がった。殴られたのか、口の端が切れて血がにじんでいる。
 続いてドアの向こうから数人の男たちが現れ、青年と激しい口論を始めた。どうやら蹴りだされた青年は、店の金を盗んだ疑いをかけられているらしい。
 無実を主張して食ってかかる青年をあざ笑い、警察に突き出されないことを感謝しろなどと恩着せがましく言って、男たちは青年の鼻先でぴしゃりと扉を閉ざした。
 青年は血の混じった唾を吐き、その辺に転がっていた空き缶を腹立ち紛れに蹴飛ばした。八つ当たられた空き缶は、昔のヨーロッパの牢獄を模したらしい鉄ビョウ付きの扉に跳ね返って虚しい音をたてた。
 鼻息も荒く扉を睨み付け、青年は踵を返した。それまで棒立ちになっていた少女は、青年に向かって急いで手を伸ばした。