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ゆらのと

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第二部 五、


長く垂れた綱をつかみ、その上に吊された大きな鈴を揺り動かした。
ガランガランと鳴る、その音はあたりによく響き渡る。
銀時は神社の賽銭箱のまえに立っていた。
ちらりと左横を見た。
桂がいる。
神妙な様子で、眼を閉じ、手を合わせている。
そちらのほうを見ていることに気づかれるまえに、銀時は視線を拝殿のほうにもどし、桂と同じように手を合わせた。
まわりには人がたくさんいる。
三が日は過ぎたが、まだ松の内なので、神社や寺院を詣でる人の数は普段よりも多い。
ふいに、右横から腕が伸びてきた。
銀時のまえに垂れている綱をつかもうとしている。鈴を鳴らしたいらしい。
だから、銀時はきびすを返した。
桂も一緒だ。
背後でガランガランと鈴が鳴るのを聞きながら、境内を歩く。
空はよく晴れている。
日差しは強く、まぶしい。
「……あー、なんか腹減ったなァ」
「昼にはまだ早いだろうが」
即座に桂からつっこみを入れられる。
さらに。
「そういえば、おまえ、また太ったんじゃないか」
鋭く指摘された。
銀時は言い返す。
「太ったんじゃねェ、肉付きが良くなったんだ」
「同じことではないか。それに、鍛えて筋肉が増えたのではなく、どうせ、いつも以上にだらだらしていた結果なんだろう」
「神楽が日本の伝統文化である寝正月を実践してェって言ったんだよ。だから、俺ァ、その願いをかなえてやったってわけだ」
「いい大人が少女に責任をなすりつけるのか、情けない」
桂はあきれた表情になった。
もう少し進むと、鳥居がある。
その鳥居をくぐってこちらのほうにやってくる人の数は多い。
しかし、それでも、やはり元日と比べると少ない。
元日に新八や神楽とこの神社に初詣にきたときのことを思い出した。
まるで芋の子を洗うような状態だった。
しかし、桂にとってはこれが今年の初詣であるらしい。
これまで、攘夷活動を支援する裕福な商人への挨拶まわりなどで忙しかったそうだ。
「……そういやさァ、さっき、なに祈ってたんだ、おまえ」
神妙な面持ちで手を合わせていた桂の横顔を思い出し、なんとなく聞いてみた。
桂は答える。
「日本の夜明けに決まっている」
色気のまったくない返事だった。
まァそりゃそーだろーね、と銀時が思っていると、今度は桂が聞いてくる。
「おまえはなにを祈ってたんだ」
「あー、そうだな、天から金が降ってきますように、ってな」
「天から金が降ってくるわけがないだろうが、バカ者」
「いや、そりゃわからねェ、気前のいいヤツが高いところからパーッとまいてくれるかもしれねーぞ」
もちろん冗談だ。
本当のことを、軽く付け足すことにする。
「それと、まァ、家内安全だ」
「それはおまえにとってはなかなか難しいことかもしれんな。普通に道を歩いているだけで、命の危険にさらされるような事件に、よく巻きこまれているようだからな」
「テメーに言われたかねェ」
言い返し、桂のほうを見た。
桂はまえを向いていて、こちらを見ていない。
その頬には笑みが浮かんでいる。
穏やかな笑みだ。
つい、見とれた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio