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ゆらのと

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第二部 十六、


蝉の盛んに啼く声が家の中まで波のように押し寄せてきている。
今日も朝から快晴だ。
夏も終わりの頃のはずだが、まだまだ陽ざしは厳しくて、涼しい風は吹かない。
外に出てしばらくすれば汗だくになるだろう。
しかし、今、その外へと行こうとしている。
銀時は万事屋の玄関のほうに向かっていた。
ふと、背後から、バタバタと急ぎ足で追ってくるのを感じた。
「銀さん!」
新八だ。
足音はふたりぶんなので、神楽も来ているはずだ。
銀時は立ち止まり、振り返った。
「なんだ?」
「肝心なもの、忘れてるアル!」
すぐ近くまで来た神楽が足を止め、胸を張って、言った。
その隣で、新八が長方形の紙を銀時に差しだす。
見覚えがある。
「あ、いけね、忘れてた」
これから行く先で必要となる物だ。
「忘れたら駄目じゃないですか。このまま気づかなくて、駅で気づいたら、そこから引き返すことになったんですよ」
「せっかく私が引き当てた物なのに、忘れるなんてひどいアル」
「あー、すまん、すまん」
軽く謝りながら、銀時は新八が差しだした物を受け取る。
列車の乗車券と旅館の宿泊券だ。
神楽が夏祭りの抽選会で引き当てた特賞である。
そういえば、以前にも似たようなことがあった。
神楽はそうした運が強いのかもしれない。
乗車券と宿泊券はふたり分だ。
だが、引き当てた神楽は旅には出ず、昼はいつものように万事屋で夜は志村家ですごすことになった。
興味ないアル。
そう言って、銀時に渡したのだ。
譲った理由は、おそらく、興味がないからではないだろうが。
銀時は乗車券と宿泊券を懐にしまう。
「じゃあ、行ってくらァ」
踵を返した。
そして、少し進み、土間まで行く。
ブーツに足を突っこんだ。
そのとき。
「旅先で、桂さんとゆっくりしてきてくださいね」
「たくさん土産を持ってくるようにって、ヅラに伝えておいてほしいアル」
新八と神楽の声が背中へと飛んできた。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio