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ゆらのと

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第二部 十五、


いつものように朝がやってきた。
それを閉じたまぶたのうえに感じて、桂の意識が覚めていく。
だが。
ついに今日になったか。
そう思い、さわやかな朝の気配とは真逆に、胸の中が重苦しくなる。
眠たいわけではなく、むしろ意識は冴えているが、起きたくない。
しかし、起きずにいたところで、朝がやってきたことを、今日になったことを否定できないのだ。
ほんの少しの抵抗にもならない。
意味がない。
だから、桂は起きることにした。
そのあと、窓のほうに行った。
カーテンを引く。
外は明るい。
今日も快晴だ。
朝の光を受けている庭を窓硝子越しに眺めながら、その曇りのない様子が自分の今の心境と違いすぎて、嘘のように感じる。
ふと、銀時のことを思った。
新八と神楽を助けることができただろうか。
そして、助けることができたとして、この屋敷にはいつもどってくるのだろうか。
銀時がもどってきたとき、自分はどうなっているのだろうか。
胸が痛んだ。
もし俺のことを大切に想ってくれてんのなら、俺の大切なものも大切にしてくれ。
そう銀時に言われたことを思い出した。
そして。
すまない。
そう心の中で詫びる。
言われたけれども、そのとおりにできそうにない。
時間は過ぎ、ついに今日になってしまった。
おまえを私のためだけに鳴く鳥にしてやる。一生、籠の鳥にしてやる。
屋敷の主の言ったことが、耳によみがえってきた。
不快だ。
それに、どうしても、不安になる。
桂は眼を伏せた。
それから、窓に背を向けた。

午前中はいつものように過ぎた。
昼になり、また、いつものように食事をした。
そのあと、桂は部屋にひとりでいた。
今日の、いつ、なのだろうか。
夜、なのだろうか。
そう思ったとき、部屋の扉が叩かれる音がした。
緊張する。
部屋に、三人、入ってくる。
トアラと、ハルラと、それと、やはり使用人らしき女だ。
「浴室へ、ご案内いたします」
そうトアラが告げた。
浴室に行くのに使用人がついてくるのは、いつものことである。
だが、いつもは、ついてくる使用人はひとりだけだ。
それに、入浴するのは、たいてい夕方頃だった。
ついてくる使用人の数がいつもよりも多いし、浴室に案内されるのが早い。
なぜか。
その理由は、眼のまえにいる三人に聞かなくても、わかる。
いよいよ、であるらしい。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio