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ゆらのと

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第二部 十、


窓の外は濃い闇がどこまでも広がっている。
宇宙を航海中だ。
出航してから、日が経っている。
何度か、船内放送では「跳ぶ」と表現されていた動きがあり、そのたびに桂は妙な感覚を味わい、さらにその後、窓の外の景色が変わっていた。
青く美しい地球を、もう見ることはできない。
そうとう遠く離れてしまったようだ。
船内は時間の感覚がしっかり存在していて、定期的に時報が鳴ったり、夜として扱われる時間帯には消灯されたりする。
桂はずっと同じ部屋に閉じこめられているが、やはり地球にいるときと同じような時間の感覚で行動していた。
独房にしては広く、いろいろと設備が整った部屋だ。
しかし、自由であったときと比べると、行動できる範囲はひどく狭い。
だからといって、おとなしくしていれば、身体がなまりそうであるし、滅入ってきそうだ。少なくとも、自分には向かない。
そう判断し、できるだけ運動するようにしていた。
天人が戸の窓から見て、からかってくることもあったが、桂は無視していた。
たったひとりで戦い続けているような状況だ。
まわりにいる全員が敵で、監禁されていて、逃げただしたところで外は宇宙、そんなことをすれば死んでしまう。
さすがに、ふいに気弱になって、心が折れそうになったこともあった。
そんなときは、地球にいる大切な者たちのことを思い出した。
特に、銀時のことを、想った。
大切にされていたことを思い出し、大切に想う気持ちを胸によみがえらせた。
心が温まり、息を吹き返すのを感じた。
負けない。
そう思った。
そして、毅然とした態度を取りもどし、この状況をすごしている。
「オイ」
戸の外から声をかけられた。
桂は宇宙を眺めるのをやめ、戸のほうを向く。
夕食にはまだ早い時間だ。
食事を運んできたのではないだろう。
だとしたら、一体なんの用だ。
そう疑問に思いながら、眼を戸の窓へとやった。
桂は眉根を寄せる。
浪士風の男の顔があった。
新八を抑えつけたり、桂の身体をさわってきたりした、あの男だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio