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えりまきとかげ
えりまきとかげ
novelistID. 42963
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スローデイ

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今日は年に一度の”一日が長い日”だ。
この日だけは世界的に一日の時間が長くなっている。
と言っても一日が24時間というのは変わらないが、1秒がいつもの2倍程度になる。
実際、その日に時計を見ると針が動くのが明らかに遅いのが確認出来る。

この日が偉い学者さんによって初めて発表されたときは、全世界の人々が驚いた後大喜びした。休日に制定されたのが大きいのだろう。
でもその発表のすぐ後に別の偉い学者さんが、

「これは異常現象です。近い内に地球規模で何か起こるに違いありません」

と言った事で一転して世界は大混乱に陥った。時間が進むのが遅くなる原因がまだわからない状態だったため、混乱するのも無理のない事だった。
結局その学者さんが、根拠の無い発言をしてしまったことを謝罪して混乱は収まった。
それが20年も前の話。
20年経った今でも原因は解明されていない。
わかったことは、時計やテレビの放送、インターネットの通信やその他機械などが通常よりも遅くなること。いつもより日が沈むのが遅いということだ。
それ以外では、水も普通に流れるし、車もバイクもちゃんと走る。風も吹くし波もちゃんと立つ。


今ではこの日はスローデイと呼ばれ、一年で最も世界中の人が遊ぶ日として受け入れられている。中にはこの日も仕事をする人も結構いるらしいが。


私は折角のスローデイにも関わらず、朝になってもベットから出ることもなくゴロゴロしていた。
正直、私にとってスローデイは退屈なだけの長い1日でしかない。
両親と妹は私を置いて遊びに出掛けてしまっていた。最近の私は親とどこかに出掛けるのが恥ずかしいものだと思っている節があり、

行かない!

と一言叫ぶと、

あら、そう

くらいの感じで、皆あっという間に出ていってしまった。特にこれからの予定もないので、もう一度寝ることにした。


二度寝から目覚めたときに、寝惚け眼で時計を見るとAM10:00となっていた。
寝すぎた! と一瞬焦ったが、今日がスローデイだったことを思い出してほっと胸を撫で下ろした。


私はパジャマのままですっかり冷めてしまった朝ご飯を食べ始めた。そして何気なくテレビをつける。
スローデイの日はテレビの放送が時間の流れに合うように2~3倍速で放送される。そのため、たまに間違って普通の日に3倍速で番組が放送されてしまうこともあるのだが、今日はまさにそんな感じだった。出演者が何を言っているのか全くわからない。動きも、ちゃっちゃかしている。私はまた間違ってるなと思った。


……あれ? 今日はスローデイじゃなかった?


そうだ。おかしいのだ。
厳密に言うとおかしいのは私だ。
そうなると私は混乱し始めていた。
自分だけ、動きがかなり遅くなっていることになる。ということは……?
時計を確認してみると、針が普通に一メモリに一秒を刻んでいる。

暫く何も考えられずぼーっとその場に佇んでいた。その間、時間は無駄に過ぎていってしまった。

私の他にもこんな現象になった人はいるのだろうか。私はそれを知るためにパソコンを立ち上げた。もしかしたら何か情報が手に入るかもしれない。
しかしいくら調べてもスローデイに私のようになった人がいるという情報は得られなかった。


────もしかしたら今日はスローデイじゃないのかも知れない。
テレビは間違って放送してしまっただけで、勝手に私が勘違いしていたんだろう。
そう決めた。決めたったら決めた。

それなら私は友達の家に遊びに行こうと思った。

友達の家は歩いて5分くらいの所にある。
近いので今日も歩いて向かったのだが、その間は車どころかひとっこひとり見なかった。
そんな町はやけに静かだった。自分意外誰もいないんじゃないかというくらいの静けさだ。
……実際に誰もいないかもしれない。


友達の家につくとインターホンを押した。
しかし壊れてしまっているのか、いつもなら家の中からインターホンの音が聴こえる筈なのに今日は聴こえなかった。

押してから5秒くらいで友達が出てきた。
何か言ったみたいだが早口過ぎてわからなかった。
私はとりあえず上がらせて貰うことにした。

友達は色々と喋っているようだが、全く理解出来なかった。それに行動が早い。友達は常にかなりの高速で動いていた。私の頭の中で前にみた子供向けのビデオに出てきたクロックアップという言葉が浮かんで消えた。あれは昔のテレビの中でのお話だ。これは現実。
そんな友達の姿を見ているとやはり段々怖くなってきた。

ごめん、やっぱり帰る

と携帯のメモに書いてみせた。
友達はまた何か早口で喋った。
表情は色々と変わるので怒っているのか笑っているのかはわからない。
私はごめん! とだけ言って友達の家を出た。
友達は流石に変だと感じたのか、追いかけては来なかった。追いかけてこられたら直ぐに捕まってしまっていただろう。


やはり私だけいつもと同じ時間の進みかたになっているらしい事はわかった。
もうこうなったら私は何も考えずに寝る事にした。
こういうときはなにもしないに越したことはないと誰かに教えられたのを思い出した。



────それから数年後

私はスローデイについての調べていた。
今、私はあの偉い学者さんと一緒に研究をしている。
あれからスローデイに自分だけがスローになってしまうことはなかった。でもあの日の出来事が強く記憶に残っていたため、いままでずっと勉強してきたのだ。
調査をしているとどうやらあの体験をしたのは私だけではないことがわかった。
少なくとも私の周りでも5人は体験していた。
日本や世界中探せばもっともっと出てくるだろう。
その私を含む全員には共通点があった。
というよりも私達だけがスローデイにスローになってしまったのは、とても簡単な理由で起こったのかもしれない。


その共通点とは、あの体験をした人は全員が
”スローデイを無駄に過ごそうとしていた”ということだ。
作品名:スローデイ 作家名:えりまきとかげ