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サイコ・PASS 火星開拓

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22世紀の日本は楽園なのか?



 2160年、東京。山手線内は過疎化し、23区は貧民街。そしてその周囲を囲むように富裕層の人たちが、幸せそうな表情で暮らしている。でも、富裕層でも定期的に人格検査があり、ストレスが高い場合、または犯罪係数があれば、過疎地に隔離させられ精密検査される。

 特に貧民街では、犯罪係数が高い大人が多い。毎日、月曜日から土曜日まで、10時間から12時間、安い賃金で働いている人たちほど、犯罪係数が高く、精密検査された後、朝鮮半島の工場へ強制移住させられる。

 人間の心の状態を数値化しても、ストレス解消のためにバーチャルリアリティで美しい異世界を体験しても、自分の心が社会に適応できなくなれば、楽園都市から追放される。

 人間の心や、また自分の記憶を映像化する技術は、21世紀末に実用化した。

 多くの富裕層の人たちは、少しでも幸せそうに暮らさなければならない。そのためバーチャルリアリティの世界にどっぷり浸かったまま、そのまま死んでしまった人も多くいる。

 日本で議会政治が始まって280年たつが、独裁政治で悪人が支配しても、民主政治でも選挙する人たちが正しい政治家を選べなければ、どちらにしても、国民にとって不利になる。その結果が、人間の心を見る、数値化する技術を育ててしまった。初めから不幸な人を作るつもりはなかった。多くの科学者や技術者は、人間の幸福のために努力した。

 でも、さすが朝鮮半島での強制動労は基本的人権を無視している。海洋開発や宇宙開発の強要も同じである。

 爆発的に発達した科学は、誰も止められない。科学の発展を止めれば、もっと悲惨になるから、進むしかない。


 近年、人権活動が盛んになり、朝鮮半島の工場の労働時間の短縮と週休制を多くの知識人が叫ぶが、大企業の工場は朝鮮半島、日本国外にあるから日本の労働基準法は適応されない。国際世論の圧力で何とかしようとするが半島の独裁者は、世論に耳を傾けない。半島から多くの廉価な部品が手に入る。それによって安い価格で宇宙ロケットや宇宙船が多く建造される。


 富裕層は、週休3日で夏休みは一ヶ月もあり、休日は別荘で楽しく暮らす。
 幸せなふりをしなければ、心理的精密検査を受けなければならない。そして、少しでもストレスを発散させようとしてバーチャルリアリティに時間を費やす。

 22世紀の日本でも人権という概念は失われいない。
 爆発的に進歩した科学が、人間の心が追いつけないのである。


 美しい綠に囲まれた多摩都市、神奈川県西部、埼玉県では、多くの人たちから笑顔が見られる。みんな幸せそうな表情をしている。この世の楽園に見えるかも知れない。