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カムイ

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オオカミの襲来


 長かった冬が終わり、雪が解けて晴天の日が続くと、くるくると巻いた、笹の新しい葉が顔を出し始めた。列をなして置かれている枯れ葉に、次々と火を入れていった。
 火は風であおられて広がっていき、火自身がまた風を巻き起こして、黒くあるいは白い煙が天空を覆い、なびいていく。
 笹原で巣作りを始めていた鳥たちは、ギャーギャーと鳴きながら飛び立ち、ザワザワと音を立てて、ウサギが一目散に、森を目がけて駆け去っていった。

 広大な原野は、勢いを増した火に舐めつくされていく。
 無論小屋周辺の草は、きれいに刈り取ってある。時々火の粉が舞い落ちてくるが、その都度丁寧にたたき消し、パチッ、パチッという音を発しながら、大きくなり小さくなりして一面に揺らめいている炎を、期待を込めて眺め続けた。
 火の勢いが鎮まり、熱さを感じなくなってから、鍬で土を掘り起こしていった。そうして枯れた笹の根を取り出していく。
作品名:カムイ 作家名:健忘真実