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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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街灯

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二つの小さな丘の間に、ひとつ、街灯があった。
 それは道端に一つだけ、草の生えた丘のふもとの道を照らしていた。ここには他に街灯はない。たったひとつだけの街灯、それは静かにそこに佇んでいた。
 雨の日には、振ってくる滴を照らした。雪の日にはその上に雪を積もらせた。夏の盛りにはその周りに虫が集った。
 街灯は、光を求める人間に暖かい安堵を与えて行った。この土地に引っ越してきたばかりで暗く寂しい道を歩いていた家族連れが、夕闇の中でこの街灯を見た。何もない、草とわずかな低木があるだけの道端。両方を小高い丘に囲まれているため街の光は届かない。そんな寂しい道端で出会った文明の光に、ああ、ここは街の一部なのだと胸をなでおろした。
 旅人がいた。観光で片方の街に来ていて、丘の向こうにも有名な観光地があると聞いて多くの人がそこを通った。街灯は彼らの目印になった。西と東の丘、そう呼ばれていた小高い二つの丘は、同じく西と東に分かれている街を引き離し、また、繋いでもいた。片方は高原に沸いた温泉地、もう片方の街は高原にある絶景地に通じていた。温泉は湯治客が多かった。その分旅館やホテルが多く、ありのままの自然は少なくなっていた。しかし、二つの丘を挟んだ隣の町には、きれいな自然が残っていた。鏡のように澄んだ池は紅葉の時期になると美しい景色を反転させて映し出す。赤く染まった木々も秋の澄んだ空も池の中にあった。高原であるから、当然、水もきれいだ。湧水も多い。
作品名:街灯 作家名:瑠璃 深月