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ぼくらはみんな生きている

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神秘的なほどの威厳と生命力に包まれながら、なんのためらい、気負いもなく、大地を静かに横断する雄大なこの河は、そこにある生命にとっては母なのかもしれない。命の溢れる雄大なこの河から数キロでも離れれば、生命を維持するには過酷な世界が待ち受けている。水の中の生命だけではなく、空の鳥や、森の動物、昆虫や微生物、そして植物たちにとっても、この河は命を育んでくれる母であり、河が通るその後には生命が満ち溢れていた。この河は命を宿すものにとっての糧であり、命を与えたのも河であった。なにも語らず…黙して…ただ与えるのみの…『 』のような…。何万年前からこの大地を横断しているのかを、生き物たちは知りえない。それを知るのは、この河に使えてきたエメラルドのこの森のはず。これまでも、これからも、森はこの河の恩恵を余すことなく敬虔に受けとり、自らのすべてを命の塊とする。森には命がみなぎっている。ミミズや蟻や甲殻類、蜂や蝶などの様々な昆虫たちは土の根や花の蜜や木々の葉から栄養を受け取り、肉食の昆虫が弱い昆虫を襲い、蛙・鼠・リス・鳥など小動物たちは昆虫を子に与え、小動物をイタチや狐などが捕食し、さらに大きな捕食者がそれらを食料として、排出し、子を産み、育てる。それら森の住人たちの賄い切れない仕事を、土の中の微生物や細菌たちが一手に引き受け、命は循環し、森の中のあらゆる生命には無駄がなく、一つの命は次の命の礎になり、次の命もそれにならう。それらの命が行き着き、土に返る最後まで、森の木々たちは優しく見守り、その土から栄養を宿し、何千年も何万年も、森の大気を浄化してきた。湿気を帯びた木々たちの吐息は神聖と呼べる香りさえしていた。この森には、命の他はなにもなかった。