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超短編小説  108物語集(継続中)

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 そんな館内居酒屋をさっさと飛び出し、さらに先へと進むと水族館のメイン、そう、大きな水槽が現れた。
「エイにタイ、イワシにタコ、それにウミガメも、いろんなヤツがいるよなあ。やっぱりここが一番の見所かな」

 高見沢は顔を水槽のアクリル面に貼り付けて、多種多様な魚を目で追ってみる。しかし、どことなくおかしい。 ギョギョッ。
「全部人面魚だ! しかも呪われたような顔をしたヤツばっかりだよ」
 高見沢はおどろおどろしい気分に。その瞬間、御目にかかるのだ。

 水中であるにも関わらず、奥の岩陰にぼうと突っ立っている――女性に。

 乱れた髪に、着物がはだけてる。青白く、ゆらりゆらりと揺れながら、高見沢を食い入るように見つめてくる。しかも怨念の籠(こ)もった目付きで、じーっと。
 高見沢はまるで吸い寄せられるように目が合ってしまった。身の毛がよだつ。

「ひゃあ、恐ろしい」
 高見沢はこの恐怖から抜け出すために、自ら頬を叩いた。そして出口へと一目散。

 外はむっと暑い。しかし、高見沢はまだ血の気が引き、寒いくらいだ。

「あーあ、深夜の水族館て、なんと身の毛もよだつ……」
 あとの言葉が続かない。高見沢はぞくぞくと震いおののきながら水族館から逃げ出した。そして恐々ながらも、もう二度と来ないぞ、と振り返った。
 すると、出口には大きな看板が掲げ上げられてあったのだ。

 またのお越しをお待ちしてます。真夏夜の―― 水ぞくぞく館へ!