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エイユウの話 ~夏~

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 燦々と太陽が差し込む廊下に、彼女は立っていた。青色の制服が真っ白な廊下と合わさって、妙な涼しさを感じさせる。一階の廊下に壁はなく、風が廊下を吹き抜けた。それが彼女の髪の毛を揺らし、夏っぽさを表している。しかし。
「あんたら、サボったわね・・・?」
 怒ったラジィは愛らしいはずの面立ちを、まるで鬼女のように歪めていた。今の彼女なら、メデューサの棲家に行っても、ゴルゴンの新たな姉妹として受け入れてもらえるに違いない。
 キースに同意のキサカが、しかし他人事のようにあっさり言った。
「おお、ゴルゴンの四女が現れた」
 サッとキースとアウリーの顔が青ざめた。言った当人は全く悪気がないようで、平然と立ち尽くしている。ブチッと堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた。彼女は廊下からずんずんと歩いてくると、キサカの前で足を止める。
「キサカ・・・、あんた軽口もいい加減にしなさいよ!」
「軽口じゃねぇ、しっかりとした本音だ」
「なお悪い!」
 言わなければいい一言を漏らした彼に、ラジィから鉄拳が飛ぶ。どうやら彼女はアウリーを保健室に連れて行ってから授業に参加すると思い込んでいたらしい。けれども、その拳は空を切ってバランスを失い、それを見たキサカが軽快に笑った。
 授業終了十分前に帰ってきた保険医から診療を受けたアウリーを連れて、三人は教室へ行かずに中庭に座っていた。もちろんそんな提案をしたのはキサカである。流の導師のことが本当に嫌いのようだ。
作品名:エイユウの話 ~夏~ 作家名:神田 諷