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雪割草

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〈41〉武士に戻る



家老の密談を盗み聞きし情報を得た三人は、光圀と若君の所へ報告に行った。

「ご隠居、あまり動かれますと、敵に感づかれ危ないのでは?」

「そうじゃの。しかし早く手を打たねばな。」

「どうします?相手が出てくるのを待ちますか?どう思う?格さん。」

「相手の動きを待つより、若君と母上様の安全を確保してから動いた方がいいんじゃないのか?」

「そうだよなぁ…。」

なかなか良い考えが浮かばないところへ光圀が突然切り出した。

「いっそのこと、城に乗り込んで手っ取り早くかたずけてしまおう。」

「は?」

「え?」

突拍子もない思いつきに皆が驚いた。

「あやつらはワシと若君を亡き者にしたい。その相手が乗り込んで行ったら相手にとって好都合。母上に危害は及ばない。どうじゃな?」

「しかし、危険ではありませんか?」

傍で不安そうに話を聞いていた与左衛門が聞いた。

「大丈夫じゃ与左衛門殿。ワシにはこの二人と与兵衛殿、あと二人戦闘員がついておるでの。
そう簡単に死にはせん。」

「与兵衛なら存分にお使いください。よいな?命に代えてもお守りするのだぞ。」

「はい。心得ました。」

「命に代えんでもいい。由紀がかわいそうじゃ。のう?」

「ありがとうございます。ご隠居さま。」

「では早速支度じゃ。与左衛門殿、城に知らせを頼む。助三郎、格之進、武士に戻りなさい。」



着流しをやめ、袴を穿き、武士の格好に戻った。
髪も元の身分に合わせた物に結いなおしてもらった。

「…由紀、ちょっといいか?」
与兵衛の家に来てから武家娘に戻っていた由紀に早苗は声をかけた。

「あっ、髪結いなおしたの?」

「あぁ。久しぶりの髪型だろ?」

「見せびらかしに来たの?俺、かっこいいだろって?」

「なわけない。手伝ってほしいことがあったから聞きに来たんだ。」

「なに?」

「…裃の付け方よくわからないんだ。」

「なんで助さんじゃダメなの?普通男に聞かない?」

「恥ずかしいし。やり方わからないなんて変に思われるだろ?」

「あっ、裸見られるのイヤなんでしょ?わたしだって見たくないわよ。」

なんでそっちに考えが行くの?

「見なくていい!もう着物着てるから脱ぐ必要ないだろ!」

「あら、そうね。」

なんでちょっと残念そうな顔してるんだろ?

「まさか、脱いで欲しいのか?お前、やたらと男の裸見るの好きだよな。」

「違うわ!そんなお下品じゃない!」

「どうだか。」

「そんなこと言ってると与兵衛さまに格之進に襲われたって言うわよ。」

「意味ないだろ?あの人俺の正体知ってるんだろ?」

「あっ…そういえば言っちゃったんだ。じゃあ無理ね。」

「よし、ならつべこべ言ってないで教えてくれ。」

「ほんと男みたいな態度で腹が立つわ!」

ああだこうだと口ゲンカしながら、裃をつけるのを手伝ってもらった。


「どうだ?変じゃないか?」
返事の代りになぜか近寄ってきて変な目つきで見上げてきた。

「ん?どうした?」

「お武家姿の方が男前ですわ。渥美さま。」

この子ふざけてる。じゃあ、わたしも。

「由紀殿もそちらのほうが数段、お美しい…。」

顎をすっとすくってみた。

「ありがとうございます。格之進さま。」

今度は由紀も怖がらずに乗ってきた。
じっと見つめあってみたが目がだんだん笑いを帯びてきた。

「きもちわるいな…やめよう。」

「うぇ…やっぱり早苗なんかイヤ!」

「なんかとはなんだ?俺だってそこそこだろ?」

「まぁ。やっとモテる男の自覚が出てきたみたいね。」

「男じゃない!俺は女だ!」

「どこから見ても立派な殿方よ!はい、刀。」

手渡された大小を腰に差した。
これで完璧な武士の姿。

「重いな…」

「そんなに筋肉付いてるのに重いの?変なの。」

いきなり何恥ずかしいこと言うの!?

「どこに筋肉付いてた?え?言ってみろよ!」

「だって、与兵衛さまよりすごいもの。」

「やっぱりお前裸見るの好きだな。あの人を脱がして見たんじゃないのか?」

「お風呂覗いただけよ。あっ…。」

「何してんだ?」

「ははは、まぁ、誰より助さんが今のところ一番ね。」

え?

「…お前、助三郎が風呂入ってるとこ覗いたのか?」

「お風呂沸かしてた時にちょろっとね。いいじゃないの。
早苗、一緒にお風呂入って堪能したんでしょ?」

思い出したくない…。
あれはイヤな思い出。

「…俺の助三郎に手は出すなよ、わかってるよな?」

「貴方のじゃないでしょ。早苗の助三郎さまよ。」

「俺は早苗だ。変なこと言うな。」

「ふぅん。やっぱりあなたたちはおもしろいわねぇ。フフフ。」

「はぁ?」

やっぱり、変態なのかなこの子。なんか変わってる。


あきれていたところへ助三郎がやってきた。

「格之進。仕度出来たか?」

「あぁ、今終わっ…」

「ん?どうした?俺、どこか変か?」

「…なんでもない。気にするな。」

ドキドキする。
久しぶりに見る本当の身分の格好の助三郎さま。
初めて見たとき以来のドキドキかも。


「…そういえば、あいつも俺の裃姿見た時、目を輝かせてたな。」

「誰です?」

「…早苗だ。」

「へぇ。あの子がねぇ。…まぁ、裃姿の方がまともな人に見えますね。」

「まともって、町人の格好はどう見えるんだ?」

「遊び人で女たらしのチャラチャラした男。」

「ひどい言いようだなぁ。」

「そうだ、由紀さん。謝れ!」

「イヤよ!そういえば、御二方、新助さんに見せないと。どっちが格好いいか聞くんでしょ?」

「あぁ。そうだった。行くぞ格之進。」

「ねぇ!わたしの感想聞かないの?」

「与兵衛さんが一番なんだろ?」

「そう!よくできました。助さんよくわかってらっしゃる。」


二人は新助を探しに行った。
新助は慣れない武家の屋敷で日中はほとんど小さくなっていたが
出される食事とお菓子だけはしっかりと食べていた。

見つけた時もぼんやりしながら何か口にしていた。

「よう!新助。着替えたぞ。」

「本当にお侍さまだ…」

驚いた表情で二人を見上げてきた。

「どうだ?感想は?」

「佐々木様、渥美様、今までのご無礼お許しください。」

突然ひれ伏して顔を上げなくなった。

「…おい、格好が変わっただけだ。助さんでいいよ。友達だろ?」

「そうだ。今まで通り、俺のことも格さんでいい。」

「本当ですか?」

やっと顔をあげてくれた。

「あぁ。友達に身分は関係ない。お前にひれ伏され、佐々木様なんて言われたくない。」

「いままで一緒に旅してきたのに、いきなりその態度はこっちとしても悲しい。」

「ありがとうございます。…こんなお武家さまもこの世にいるんだ。」

「で、どうだ?格好いいか?」

「はい!助さん普段と全然違いますね!」

「だろ?真面目で格好よく見えるよな?」

「どっちが上だ?」

「助さんだよな?」

「なんでお前が言うんだ?新助に聞いてるんだ。棄権は無しだぞ。」

「張り合う意味がわからん。お前の方が絶対に格好いい。」

「…。もういい!やめた!」
作品名:雪割草 作家名:喜世