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雪割草

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〈32〉忍びの残党?



夜が明けてきた。
早苗は由紀に悩みを相談し、早々に寝ようと思っていたが、
他の話までしてしまい、一睡もしなかった。


「結局朝までじゃべっちゃったね…。」

「ほんと。わたしといたなんて助さんや新助さん言ったらだめよ。」

「なんで?」

「わかるでしょ?ダメなものはダメ。変な勘違いされるわ。」

「ふぅん。…じゃあな。またあとで。」

「ねぇ、ほんとにわかってるの?」

「あぁ。言わないから、心配するな。」


このとき、二人は気づいていなかったが。
早苗が姿を変えた瞬間を見ていた男がいた。


「おはよう。」

「あっ、あぁ。おはよう。」

「なんだ?隈があるぞ。さては徹夜したな?」

「へ?」

夜中に起きてきて、見られたかな?

「根詰めて仕事するな。半分は俺に任せろ。いいな?」

「あぁ。わかった…。」



顔を洗いながら鏡を覗いてみた。

何となく目が赤い…
ほんとに隈がある…
男は化粧でごまかせないから面倒。
この黒ずみ、消えないかな?
化粧の必要がなくて楽ちんだけどこういうときにこまるなぁ。


不意に背後に人の気配を感じた。

周りに誰もいないはずなのに。

「…誰だ?」

「あっ…お気づきでしたか。」

「…何者だ!」

「決して、怪しいものではありません。あなたに用事があって来ました。」

もしかしたら、弥七さんが言ってた忍びの残党かな?
姿が見えないからそうかも…

「怪しくないのなら、出て来い!」

「すみません。」

出てきたのはどこからどう見ても百姓の男だった。

「…橋野家の方とお見受けします。」

「え?」

やっぱり、わたしに秘術を聞き出そうとしてるに違いない!
わたしの正体を知っている!さっき見られてたか。

「御心配なさらず。その辺の悪い輩とは違います。私は昔、橋野家に仕えていた者の子孫です。」

本当に、うちのご先祖は忍びだったんだ。
秘薬だけじゃ信用できなかったけど、こんなところに昔の使用人らしき者の子孫がいた。


「…それで、どんな御用ですか?」

「先祖から伝わる巻物を渡しに参りました。いつか橋野家の方が戻ってきたら返すようにと。」

太い巻物を渡された。
紐を解き中見てみたが、意味不明な文字の羅列だった。

「これって、なにが書いてあるんですか?」

「さぁ。橋野家当主にしかわからないそうです。しかし、大切なものだそうで。」

よほど大事なのかな?
もしかしたら秘術、秘薬について書いてあるのかも。

「では当代、当主である父に渡しておきます。ありがとうございました。」

「はい。やっと預かりものを返せました。ほっとしましたよ…。」


うれしそうな表情だった。

「あの…こんなこと聞いていいかわかりませんが、貴方は、忍びですか?」

「いいえ、元から百姓です。あっ、これどうぞ。さっき畑で採りました。」

野菜を少し分けてもらった。朝ごはんに食べようかな。

「ありがとうございます。あの、この辺には多いんですか、忍びは?」

「はい、うじゃうじゃいます。山を抜けるまでは気を抜かないように。」

「ありがとうございます。では。」




台所へ行くと、由紀とお銀が朝ごはんの支度をしていた。

「お銀、なに作ってる?」

「知らない。由紀さんのお手伝いしてるだけだから。」

「え?」

「…早苗、お銀さんひどいの。お米は途中で御釜の蓋開けるし、包丁は持ち方が小太刀で、誰を刺すの!?って感じで。もう、見てられない…。」

忍びってごはん作れないのかな?
作れなくてもいいのかな?

「手伝おうか?」

「何言ってるの?姿が格さんなんだからダメでしょ?」

「なんで?昨日も昼ごはん作ったぞ。」

「バレなかった?味でわかるでしょ?」

「助さん鈍感だからわかるわけないわよ。」

「そうですね。」


「うまいって喜んで食べてくれた!いいだろ?」

好きな人にご飯作ってあげた!
姿が男だったけど…

「へぇ。よかったわね。格さん!」


作品名:雪割草 作家名:喜世