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続 帯に短し、襷に長し

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和裁業界のジレンマ


 ジレンマとは。
 wikiによると、一つの問題に対して二つの選択肢があり、どちらをとっても不利益にしかならない板挟みの状態。らしい。
 (https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E ジレンマ@wikipedia

 知らなかったのだが、今から数年前、着物ブームだったらしい。
 今も、それが続いているのかどうかは分からないけれど、引きこもり仕立て屋の感覚としては、どこにそんなブームが? と、いう感じ。
 
 着物は、衣服なのだから、着てもらわないと用をなさない。
 お誂えのお客さんがよく言う冗談で、「反物のままじゃ、着れないからな!」
 がはは。と笑って、仕立て代を値切っていく。
 あんまりやりたくないが、個人のお客さんの場合で、仕立てようかどうしようか迷っている人に対して、お安く値段を提示することは、のちに自分の首を絞めることになる。
 そういう人には、少し上乗せした値段を提示して、そこで諦めるならそれまで。少し粘るようなら、通常価格までお値段を下げて見せる。結局、そういうお客さんは仕立てても着てもらえないので、のちの仕事にも響かないから、あまり真剣にもならない。

 けど、前述のお客さんの言うように、反物のままじゃ着られないのだから、どうしたって仕立ててもらわなければならないが、仕立て代も、安くはない。
 自分が普段着として着る場合、しま○らやセ×ールなどの半額セールなんかを狙っていくから、900円のブラウスを4、5年掛けて着倒す。着物はどうかというと、普段着のウールであっても、ウールの反物代と仕立て代だけでも2万はかかる。この2万円の元手を900円のブラウスと比較すると、一生かかっても元は取れないかもしれない。
 それだけ、割高になる。
 普段着はそうだが、晴れ着となると、急に着物の旗色が良くなる。
 一枚、数百万する訪問着は、ばあさまから孫世代まで、生地が擦り切れるまで着られる。
 例えば、裾が擦り切れたら八掛を取り換えればいいし、全体の色がくすんで来たら染め変えればいい。柄に飽きたら、箔をのせたり、刺繍を入れたりもできる。裏が黄ばんだら取り換えたらいいだけのこと。ただ、そこまでするメンテナンス代とかしまっておくための収納場所なんかに労力と財力を取られる。その点では、洋服も同じだが、洋服のほうがコンパクトにしまえる。
 洋服の難点を上げるとすれば、うっかり流行りの形を買ってしまわないことだろう。
 今、バブリーな頃のスーツは、当時と同じTPOであっても、着ることはかなりの勇気を要するし、振り絞った勇気をまとって出かけたら、怒れるゴジラのごとく、顔から火を噴いて歩くのは明らかだ。
 また、体型に左右されやすい洋服は、ちょっと太ったり痩せたりしただけで、とたんに不格好になる。喪服などは、体型をごまかしやすい形になっているが、それはそれで、誰が着てもあまりスマートには見えない。

 どちらも一長一短あるが、究極の選択は、洋服はざっくり着やすいが、和服は着なれた人でも、着付けに頼ることだろうか。

 一人で着られないものを、着付け教室にまで通って、時間とお金を消費し、現代生活において、普段着としてはあまり一般的でも、動きやすくもないものを買ってもらおうと思うのは、知恵のいることだ。

 着物は、日本の「民族衣装」なのだから、もう、いっそ、政府管轄にして、お金でも、出してくれないかな。
 と、思う、今日この頃。

          (了)

作品名:続 帯に短し、襷に長し 作家名:紅絹