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帯に短し、襷に流し

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浴衣を着た!



 先日、お祭りがあった。
 「復興夏祭り」だそうだ。
 復興、というわりに、花火がないとはどういうことだ?
 紺屋の白袴ではないが、着物なんぞはついぞ着たことがない。というのはいいすぎだが、直近で着たのは、500円でやっていた、市の着付け教室だ。かれこれ、10年ほど前のことになろうか・・・・・・。
 ましてや、人前で着るのは、20年以上前の友人の結婚式・・・・・・、いや、その後、仕立て屋の卒業式で着たか。どちらにしても、人に着せてもらったもので、自分で着たものではない。
 自分で着るのは、これが初めてなのだ。
 しかも、姪っ子二人もやってきて、あーでもない、こうでもないと四苦八苦。2時間かかって、冷や汗と脂汗とをしこたま流して、何とかサマになった。
 さて。お祭りだ。夏祭り。
 盆踊りではない。れっきとした「夏祭り」。
 ステージがあり、そこでは、一昔前のお笑い芸人が、笑いを取って・・・・・・、多分、とってたんだろう。
 田舎のことなので、生でテレビに出ている、あるいは、出ていた人を見る機会がほとんどないので、それでも盛り上がっていた。
 私に言わせれば、そんな笑えない芸人を呼ぶ金があったら、花火、上げろ。

 片や、出店が並び、自衛隊のブースまであって、震災時の活動について写真で公開していた。あの時は本当にお世話になったな。と、感慨もひとしお。
 ついでのように、軍艦や空母の写真まであって、自衛隊もいろんな意味で必死だ。
 集まる人たちも、家族連れ、友達連れといろいろ。
 さすがにお祭りだけあって、浴衣姿が多かった。
 最近の浴衣というのは、特に小さな子どもは「浴衣ドレス」という和洋折衷の浴衣でも甚平でも洋服でもないものを着ている。
 上は、着物風の衿を打ち合わせ、甚平風に紐を結んだり兵児帯を結んだり。
 下は、まさにドレス。レース状に生地を重ねてスカートにしている。
 お母さんやお父さんに手を引かれ、風船や水ヨーヨーなどをもった姿は、本当にかわいいと思う。
 中学、高校生ぐらいになると、兵児帯にレースをあしらったり、作り帯にオーガンジーの生地を合わせたりと、きれいにまたかわいく着飾っていて、若さを謳歌しているようだった。
 若さを謳歌するのは、大変結構で喜ばしいことだが。
 浴衣、という基本を踏まえて、レースや帯飾りでアレンジする分には、見ていても可愛らしいし、自然に顔もほころぶのだが、見るに耐えないものもある。
 むしろ、見たくないもののほうが、妙に目に付くのは、自然の法則だろうか。怖いもの見たさ? それとも、只の好奇心?
 まず、衿の打ち合わせが浅い。浅いドコロではない。
 ほとんど肌蹴そうになっている。
 V字は、景気回復だけで十分。浴衣の衿にV字は、なくて結構。
 数を勘定したわけでもなく、統計を取ったわけでもないので、はっきりとはいえないが、ワタクシが見かけた、ほぼ半数ぐらい、別の言い方をすれば、見た方向に必ずそのうち合わせの浴衣が見えた。
 それは、少ないほうだとはいえない。ただ、浴衣を着るのは芸がないので、色気を出したかったのかもしれない。と、いいように考えてみるが、折角の浴衣が、まるで花売り娘さんのようだった。
 色気、とは、エロではなく、魅力だと理解するのは飛躍しすぎだろうか。
 蛇足ではあるが、「花売り娘」とは、もちろん、「花」を売る娘さんであり、ここで意味する「花」とは「生花」ではないことをあえて断っておく。
 それから、裄が長すぎる。
 裄が長すぎるのは、手元がもたもたして、暑苦しく見える。
 また、巾着から物を入れたり出したりする所作が、なんとも野暮ったく、幼く見える。
 昔見た、お袖を肩までたくし上げて、勇ましく着付けている人がいなかっただけ、よしとしようか。
 何事にも、基本、基礎というものがある。
 家は土台がしっかりしていないと、風が吹いたら倒れてしまう。
 応用とは、基礎がしっかりしてこそ生きてくるものだし、粋に見えるものだ。
 くつろぎ着であり、部屋着である浴衣について、堅苦しいことは言いたくないが、人と違う個性的な着方をしたければ、まずは、オーソドックスな浴衣を着付けて欲しいと、切に、切に願ったお祭りでした。

 さて。
 そんなこんなで帰宅して、暑苦しい帯から開放されてみると、補正にはさんだタオルがしっとりと濡れていた。
 かなり、期待して体重計に乗ったが、針はいつもの所定の位置から動こうとはしなかった。
 浴衣にやせ効果はないらしい。


 よき着物ライフを。

2012.8.29
2014.9.8 加筆修正

作品名:帯に短し、襷に流し 作家名:紅絹