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エイユウの話 ~春~

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 三十分後。保険医の迅速な対応と高い能力のおかげで、ラジィは傷一つ残らずに済んだ。痛みとの奮闘により、体力を消耗していたため、今はぐっすりと眠りについている。
 そんな彼女の枕元に座っていながら、キースは彼女を視界に入れることも出来ず、ただただ足元を見ていた。ガラガラと扉の開く音がする。誰かと気になることも無く、だから視線も向けなかった。
「一週間に二回も保健室に来るってどんなだよ」
 あきれたセリフと声でわかった。明の授業を受けているはずのキサカが、そこに立っている。なんて言ってきたのだろうかと、キースは不思議に思った。それでも彼は、泣きそうな笑顔でキサカに同意する。
「僕もそう思う」
 本当はキサカが来てくれただけで、気が緩んで本当に泣いてしまいそうだった。彼女を助けられなかったことに、自分のせいで彼女に迷惑をかけたことに、彼女のあの笑顔に、負けてしまいそうだったのだ。
 壁に寄りかかるような体勢で隣に立ったキサカに、キースは尋ねた。
「君はどうしてここに?」
 どうやって、という意味合いも多く含んでいた。しかしキサカはそこに触れずに話す。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷