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衝動SSまとめ(アポロン)

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千薫





2012/6/12更新

自分の気持ちに気づかない薫。
つづきます。







――――――――――――――――――――




耳を通り越して、体に響いてくる音。
初めてそんな音に出会った―――――







荒く見えて繊細で、
君に何かあればすぐに分かる。

君に辛いことがあった時、
自然と胸が苦しくなってしまう。



君のそういう自然体な、
着飾ることのないそんな音が好きだ。




「ボンどがんした。練習ば行くぞ。」

「あぁ、」


最初の頃、俺はこいつに引っ張られていた。
俺は素直について行くことが出来ずに居たから、それはありがたことだった。
俺が一歩、一歩と踏み出し始めると、いつも君は先を歩いていた。


「ボーン、なんしよる。」


俺がいたって普通の速さで歩いてるなんて気づかずに、
君は振り返っては俺に早く来いと怒鳴った。
確かに俺は文句ばかり言ってはいたけれど、嬉しかった。


でも、しまいにはやっぱり、


「しょんなかなぁ。」

「何するんだ。」

「あーせからしか。」

「君が速いだけだろうがっ」

「あーあーせからしかっ!!」

「ったく、走ればいいんだろっ。」

手を引っ張られ歩く姿が恥ずかしくて、俺が振り払って走り出す。
すると君も走り出す。

「なっ待てボン!!!」

俺を簡単に追い抜いて、俺に追わせるんだ。
分かっていても、俺もやっぱり走ってしまう。

「・・おいっ待てっっ!!!!」

そして息切れをして到着するハメになる。



「ははっどべ。」

「うるっさい。」


「いやぁーぬっか、ぬっか。
ボン、まず休憩ばすんぞ。」

「またスイカか?本当に好きだな。」

「おう、スイカは美味かぞ。」

一つは空、もう一つは半分入ったままの銀色のボールを階段の一番下の段に置く。


タタン



タンタタタン


ダンダンダンダンダダン

タタタン


簡単に鳴らしただけのそれも、
君の気分で変わるのを知っている。

きっと今日は・・


「モーニン、やるか?」

「分かっとるやっか。」

「間違っても祭り囃子にしてくれるなよ?」


祭りジャズも嫌いではないけれどね。





「また明日な。」

「君が遅刻しなかったらな。」

「あーこすか。」

「卑怯なもんか。」


「またな。」


「あぁ。」


頭の中で流れるドラムが俺を興奮させる。
いつまでも、ずっとずっと聞いていたくなる。


俺はやっぱり君の、
千のドラムが大好きだ。




だから・・・これはきっと、
君のドラムが聴けないから。



君とのセッションが出来ないから。




だからなんだって。


だからなんだって・・・








坂道はこんなにも長かっただろうか。