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Guidepost

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09.気になる相手



……運営って言っても……別に自分たちが開催する訳でもなし。
要は取り決められた事をクラスに報告したり、またクラスで誰が何の球技をするか決めるのを取りまとめたり……後は当日審判やら細々とした……要は雑用をするのが仕事なんだな、と三弥は理解した。

さすが俺。これ、クラスで選ばれたのは、きっと皆やりたがらなかったからだろうなぁ、と密かにため息をついた。
勿論、影で「保志乃くんなら任せられるよね」などと言われてあえて選ばれたんだなどと思いもよらなかった。
とりあえず、明日のHRで球技大会の球技をクラスで決めてもらわないとな……などと思いながら、臨時球技運営委員会が終わった後でノートをトントン、と机でそろえてから立ち上がる。そうして歩きだした所で自分の肩をトントン、とたたく人がいた。
「?」と思いつつ振り返ると、そこにはニコニコと笑顔のイケメン。
……ていうか誰だろう、俺、なんか落としたのかな?とチラリとその相手の手元や自分の持っているものを見ていると相手が口を開いた。

「君、保志乃、だろ?」
「……え?」



「お母さーん。レンジがやつあたりしてくるぅー」
「してねーよ。お前らが煩いからだろうが」
「ていうかいちいち報告してくるな、そして俺はお母さんじゃない」

旧音楽室で。
今日も特にする事のない彼ら(特によくセットにされがちな2人)は無駄に集まっていた。
そして、有紀と亜希が、椅子に座り妙に静かな廉冶に「ミヤちゃんいないから拗ねてる」などと余計な事を言って殴られ、亜希がそれを本を読んでいる陸斗に報告しているところだった。
琴菜は頬杖をつきながらそんな彼らを見ていた。有紀がそれに気付き、琴菜に聞いた。

「コトちゃーん!どしたの?ボーっとして?」
「んー?……あー。えっとね、なんかいいネタないかなぁーって思って」
「ネタ?」
「あードウジン誌ってやつー?」
「うん!ねーねー?有紀くんと亜希くんでちょっと絡んでみない?」
「「俺ら?」」

思いがけない事を言われ、有紀と亜希は顔を見合わせる。そしてニッコリと笑い合い、「こう?」などといいながらお互いくっつき合う。

「キャー素敵素敵!ちょ、ラフっていい!?」
「いいよー!なんだったらチューだってしちゃう!」
「そうそう、ホッペにチュー」
「キャーやってやってー」

悪ノリをする有紀と亜希やそれを見てキャアキャア言っている琴菜を、廉冶と陸斗は呆れた目で見た。
ただその後、陸斗は何か考えるように琴菜を見てふと首を傾げていた。それに気付いた廉冶が陸斗に聞いた。

「リク?どうかしたのか?」
「ん?いや……。ふぅ……まったくお前らには呆れるよ。俺はそろそろ生徒会に戻る。多分もうそろそろ球技運営委員会が終わる頃だろうから、それに出てた書記のヤツも戻ってくるだろうし。じゃーな。ほどほどに帰れよ」
「「はーい、お母さん!」」
「……」

首を振り振り呆れたような表情をしつつ、陸斗が教室から出て行った。それを見送りつつ、廉冶が琴菜に聞いた。

「コト、お前どうする?もう帰るか?」
「ん?んー……ううん、最近サボってた吹奏楽部に顔出してくる。あんまりサボると、もう来るなって言われちゃう」

琴菜は少し考えるように手の指を唇にあててからニッコリと答えた。廉冶は頷いて立ち上がった。

「そうか。じゃーな」
「やだ!レンジくんったら俺らに聞いてくれない!」
「冷たいーレンジくんたらーひどいー」
「煩せえ、知るかい」
「あはは。じゃあ、ね、レンジ」
「……。コト」
「なあに?」
「お前、大丈夫か?なんか元気、なくないか?」
「気のせいだよ!あたしは元気ー!有紀くんと亜希くんの絡みも見れたしねー」
「そか。なら、いい。またな」

「そんなんで元気一杯になるなら、俺らいくらでも絡んであげるよー?」などと言っている有紀と亜希をしり目に、廉冶は琴菜に笑いかけ、そして教室を出た。
そうして自分の教室に戻る。
委員会、もう終わってるのか……などと考えながら。

「……?」

教室にたどり着き、後ろのドアから中に入ろうとしたら、相変わらずの三弥がまた金魚に話しかけようとしているのに気付いた。
ただ、いつもはため息とともになんとも悲しげに話しかけている事が多いというのに今日は違った。

……笑って、る……?あの保志乃、が……?

三弥はいつもと同じように、金魚を置いている棚に腕をのせ、そこに顎をのせる体勢をとると、金魚に話しかけ出していたが、顔が笑っていた。
廉冶は後から入るのをやめ、前の入り口へ移動し、そこからソッと教室に入った。そしてそのままバレないように静かに三弥に近づく。

「良い事があったってのはね、金魚。俺ね、今日人から話かけられたんだよ!?」

その言葉が聞こえ、廉冶は思わず吹き出しそうになるのを、必死になって口を抑える事でこらえた。
相変わらずの保志乃クオリティだな。誰かから話しかけられてのあの笑みか。じゃあ友達宣言とかされたらもう死んでしまうんじゃないか……?
そう思いながら、ふと自分と友達なんだと聞いて心底喜んでいた三弥を思い出す。そして浮かべた笑みは、次の三弥の言葉で消えた。

「中学ん時から俺の事、知ってたんだって。ずっと話しかけたいって思ってたって。ずっと気になってて、今回たまたま同じ役員になったのを知っておもいきって声、かけてくれたんだって。嬉しいねぇ、金魚」

……なんだ、それ?まるで告白じゃないか……?
相手は……どんなヤツなんだ……?女?男?くそ、なんなんだよ、なんかすげぇ気になるんだけど、ていうか何で急にこんなにイラつくんだ、俺?

その時、そんな廉冶のなんらかの気配に気づいたのか、三弥が振り向いた。

「わ……さ、斉藤?い、いたの、か?い、いつから?」

金魚に話しかけていたのを見られたのだろうか、と慌てふためく三弥の肩を、廉冶は黙ってつかんだ。そしておもむろにそのまま引きよせ三弥の唇に口づける。

「っ……ん……?」
「……」

しばらくそのまま口づけて、ようやく口を離すと、三弥は少し息を乱した様子で顔を赤らめ、言った。

「ちょ……こ、こんなとこで……。こ、これって挨拶と言えどもあまり人前ではしないって言ってなかったか……?」
「……挨拶、ね。……どのみち誰もいないだろうが」
「そ、そりゃそうだけど……。えっと……斉藤はなんか用事?俺はもう委員も終わったし、帰るとこなんだ」
「あー……。俺も帰る」

廉冶はとりあえず三弥を離し、自分の机に行って鞄を取った。そうして同じく鞄を手にした三弥をちらりと見てから教室を出る。
少しの間黙ってた後で、廉冶が聞いた。

「委員会は、おもしろかった?」
「へ?……いや……なんていうか……普通だが……?」
「……そう、か。まあそりゃそうだな」
「あ、でもね、嬉しい事があったんだ」
「なんだ?」

あまりの返事の速さに少しびっくりしつつ、三弥は続けた。

「俺に話しかけてくれる人がいたんだ。びっくりしたよ」
「……。…………?……えっと……それだけ、か?」

もっと詳しく聞かせてくれるのかと待っていたがそれ以上何も言いそうもない三弥に廉冶はつい聞き返した。
作品名:Guidepost 作家名:かなみ