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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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十の一  【始】



【始】という字、いささかややこしい漢字だ。

簡潔に解釈すれば、右の「台」は農耕を始める儀礼であり、人の出生が作物の生産と同じように考えられた。
そして、鋤(すき)を清めることが出産の儀礼となった。
ここから、女子が鋤を持って出産の無事を祈ることが【始】ということだそうな。

もう一つピンと来ないが、さらにややこしく、【始】には同じような漢字がある。
それは「初」。

一体【始】と「初」の違いは何なのだろうか?
調べてみると、【始】は動詞であり、「初」は副詞だとか。
つまり「仕事を始める」であり、一方は「初めての仕事」ということになる。

ならば、それぞれの反義語は何なんだろうか?
【始】は……「終」
「初」は……「末」  となる。

では、これらを英語に直せば、
【始】は「start」……「終」は「finish」
「初」は「first」……「末」は「end」  ということか。
こちらの方が分かり易いかな?

そして、輪廻を表す仏教用語に「無始無終」という言葉がある。
辞典の解釈によると、「始めも終わりもないこと」とあるが、むしろ輪廻は「始まることもないし、終わることもない」の方が正しいような気がする。

他に【始】、「始終」と「始末」と入り乱れた熟語を作る。
「始終」は動詞的要素があり、始めてから終わらせるまでのこと。
したがって「ずっと」という意味になってるようだ。

ならば「始末」は?
始めてから、そして最後にエンド(末)と切ってしまう、つまり決着を付ける意味になってるようだ。

と言っても、唱歌の「一月一日」で余計に複雑になる。
その歌詞は

年の【始】めの 例(ためし)とて
終(おわり)なき世の めでたさを
……

年の【始】めとは、なんじゃこれ? となるが、
この【始】は、きっと「終」なき世の……この「終」との対なのだろう。
「始終めでたさを」ってことらしい。

というような事をグダグダと書き連ねていると、この辺りで「始終」より「始末」の熟語が必要のようだ。