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Episode5,事件の真相


 
交差左折して100メートルほど進むと大きな2階建てで屋根には煙突があり、庭には大きな花壇とパラソルと白いテーブルが置いてあるお屋敷のような家、ここが水城さんの家だった。
 兄貴達のマンションも凄いと思ったけど、水城先輩の家も充分凄い、まるでどこかのビップだった。
「本当に上がっていかなくてもよろしいんですか?」
「ええ、すぐにここから離れないと……」
 騒がしくなってきた背後を見る、今丁度警察がやって来たところだ。
「ああ〜、ど〜しよう、チヅルちゃんに怒られる〜」
 今更後悔したって後の祭りだろうにと心の中で思った。
 すると水城さんも責任を感じているんだろう、不破さんに向って頭を下げた。
「ごめんなさい、私の問題なのに……」
「えっ? そんな事無いよ! アタシは正義の味方だもん! 悪い事はしてないよ!」
 その代わり良い事もしてないと思うけどね…… 
 セイヴァ―・エージェントはなるべく極秘裏に動かなければならないのにこうして警察沙汰を起こしたのだから、決して褒められた行為ではなかった。
「雫?」
 するとその時だった。
 扉が開くと思わず水城先輩の大人バージョンかと思うくらいのそっくりな人が現れた。
 年は20代の前半くらいだろう、水城先輩と同じ黒髪で、白と言うより蒼白の肌、ノースリーブの白いワンピースを着ていて、肩には白いカーデガンを羽織っている、
 彼女の名前は水城・霧、水城先輩のお姉さんだった。
「お姉さん、ダメじゃ無い寝てなきゃ」
「何だか表が騒がしくて…… ごほっ、ごほっ!」
 お姉さんが咳き込むと不破さんは気まずそうに目を反らした。
「大丈夫だから、後で行くから」
「ごめんね、私がこんな身体じゃなかったら……」
「それは言わない約束でしょう」
 何だか昔の時代劇を見ている気分だった。
「ごめんなさい、何もお構いできずに」
「あ、いえ、良いんですよ気にしないでください」
「アタシはそれがお仕事なんだから!」
 不破さんは自分の胸に手を当てると水城先輩は微笑した。
 ちなみに不破さんが横転させた車の事は警察署内にいるセイヴァ―・エージェントの協力者が事故として処理してくれる事になった。
 なお翌日、不破さんがその事で里中先生からこっぴどく叱られたと言うのは言う間でもなかった。

 さらにその翌日、不破さんはこの学校の生徒として転入した。
 そして保健室にて正式にセイヴァ―・エージェントとしての任務を聞かされた。
「分ってるとは思うけど、貴女の役目は水城さんの保護よ」
「ええっ? 犯人捕まえんじゃ無いの〜?」
「犯人の特定がまだできてないのよ、犯人逮捕はタクミ君が帰ってきてからでも遅くないでしょう?」
 里中先生の言う事にも一理あった。
 この地域にいる戦闘派のセイヴァ―・エージェントは兄貴と不破さんしかいないから、下手に動けばガードががら空きになる、
 そこを狙われて水城先輩が襲われたら元も子もない、
「まぁ、一応犯人の目星はついたわ」
「どんな人なんですか?」
「一言で言うなら…… 超能力者よ」
「ちょ、超能力者?」
 そんなバカな、と言いたいが私は兄貴がテレポーテーションしているところをこの目で見ている、信じざるおえない、
「確かに地球じゃ眉唾ね、でも超能力って言うのはその星の生命体が脳の進化の過程で生み出した思念の力なの、本来誰しもが使えるものよ」
 つまり私でも使えるって事になる、
「先天的に使える者と後天的に目覚める者に分かれるけどね」
 地球人は時々先天的に出来る者がいるらしいけど、大部分が後者らしい、
 そして超能力の存在が認められている惑星は普通の一般教養として取り入れられていると言う、
「もちろん、能力の覚醒にはそれ相当の努力が必要だけどね」
 兄貴もゼルベリオスで血のにじむ努力を重ねた結果、超能力の覚醒に成功したと言う、
「恐らく犯人もテレポートができると考えて間違い無いわね」
 里中先生の調べでは犯行に使われた凶器は理科準備室から盗まれた物だと言う事が分かった。
 理科準備室には薬品を始め危険な物もある為に鍵は厳重に職員室の金庫に管理され、尚且つ持ち出すには許可を取り、中に入るには教師の立会いが必要となる、
 里中先生は学校内にいる異星人の教師に協力を得て調べた結果、鍵は持ち出された形跡がなく、薬品の棚にも鍵は掛けられてた。
「確証は無いけど、恐らく自らを部屋の中に転送させ、棚の中にあった薬品を瞬間移動させて手に入れて部屋から出る、そんな所かしらね」
「でもどうやって探すんですか? 証拠もないのに……」
「それは心配いらないわ、調べた結果この学校の地球人の生徒は超能力に覚醒していないわ」
 里中先生は髪の毛で隠れた右耳を見せた。
 そこには兄貴のギルや不破さんのロンと同じ紋章が描かれた逆三角形のピアスがあった。
 それは里中先生のサポーターのエンゼルと言って、超能力者が持つ独特の生体波長を調べる事ができると言う、
 そして反応したのがこの学校に在籍する異星人の生徒の本の数人だけだったと言う、
「後はあの時のアリバイを調べれば良いだけよ…… とにかくファーラン、今度は余計な事はしないで任務に当ってね」
「うう〜っ」
 不破さんは低く唸った。
 よほど昨日の不破さんの事故処理が大変だったんだろう、結構ドスが効いた言葉だった。