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Episode3,小さな命


 
 それから約1月経った5月半ば、
「おっはよ〜ス」
 2時間目が終わった時に兄貴が登校してきた。
 この3日間兄貴は出動で休んでいたのだった。
 一旦指令が出されると丸一日、長い時は一週間くらい学校に来ない事がある、普通これだけ学校に来ないと誰しもが不審がるだろうけどウチの学校は貧しい人間には少しだけ優しく、アルバイトと言えば休学させてもらえるのである。勿論学業優先になるけど……
「なぁなぁ御剣」
 すると兄貴の側に友人でありクラスメイト達が集まってきた。
「お前本当にどんなバイトしてんだ?」
「まさかヤバイ仕事って訳じゃ無いだろ?」
 兄貴の友人達も興味があるんだろうな、話から察するにセイヴァ―・エージェントだって事は伏せてるみたいだけど、
「だから言ってるだろ……」
 兄貴は人差し指を立てると……
「悪い異星人から地球を守る事だって」
「だあっ?」
 私は思わずイスから転倒した。
 周りは一斉に私の方を見る、
「し、白金さん大丈夫? どうしたの?」
 近くに居た女子生徒が私に近づく、
「だ、大丈夫、ちょっと眩暈がしただけから……」
 私は立ち上がるとイスを直して座り直した。 

 その次の休み時間、私は兄貴を屋上に連れ出した。
「思い切りバラしてるじゃない! 私には内緒にしておけって言ってたくせに!」
「セイヴァ―・エージェントとは言ってねぇだろ、実際誰も信じてねぇんだし問題ねぇって」
 確かにあの中で信じているのは1人もいなかった。みんな兄貴が面白いって言って笑ってるだけだった。
「前にも言っただろう、目立つ時は思い切り目立った方が良いって、重要な事さえ言わなきゃバレねぇもんなんだから」
「バレても知らないからね?」
 見てるこっちの方が危ないわよ……
 私はため息を零すと今まで持ってたクリアファイルを手渡した。
 これは兄貴がいない間に頼まれた授業のノートのコピーだった。
「来週テストだけど間に合うの?」
「まぁ、何事も無ければ…… な」
 兄貴はファイルを見ながら頭を掻いた。
「正直時間が惜しいんだよな…… まさかアレ使うわけにもいかないし……」
「あれって?」
「ん? まぁ…… とっておきだな」
 一体どう言う物かは結局教えてくれなかった。
 
 それから数時間後の放課後、
 私達は下校しようと昇降口にやって来た。
「そう言えば気になったんだけどさ……」
「何だ?」
「兄さんって何処に住んでるの?」
 私は兄貴が住んでいる場所を知らなかった。まさか橋の下にダンボールハウスって訳じゃ無いでしょうけど……
「ん〜、まぁお前になら話しても良いか…… でもその前にだ」
 すると兄貴は右手をポケットに突っ込むと左手で私の左手をつかんだ。
「えっ、ちょっ?」
「これやるよ」
 すると私の左腕に何かが撒き付いた感触が走った。
 兄貴が大きな手を退けると私の腕には黒いベルトに白い長方形の青い小型の機械に黄金の星型のフレームが描かれ、中央に小さな赤い球体が取り付けられたブレスレットが巻きついていた。
「ギルの代わりって訳じゃ無いが御守りだ」
 兄貴が説明しているとその時、突然校内放送が響き渡った。
『2年A組の御剣・匠君、至急職員室の里中まで来て下さい』
 その声には聞き覚えがある、
 放送の中にあった『里中』と言う人物本人だった。
 フルネームは里中千鶴、兄貴が転校してきた数日後に赴任してきた保険医だった。
 すると兄貴はため息を零すと肩を落とした。
「呼ばれたか、しかたねぇ…… そのまま出撃になるかもしれねぇから先に帰っててくれ……」 
「何で分かるの?」
「……帰ったら話すよ」 
 兄貴はそれだけ言うと手を振りながら職員室の方へ向って行った。
 仕方ないので私は1人で帰宅した。

 翌日、案の定兄貴は学校に来なかった。
 やっぱり出撃だったんだろう、だけど私には確める術が…… あるにはあるんだけど無いに等しかった。
 その日の授業が終了し放課後、家に帰ってきた私は私服に着替えると自転車でコンビニへ向かった。テスト勉強に集中する為に夕飯などの必要な物を買う為だった。
「どうやって動かすのよこれ?」
 コンビ二から出てきた私はふと兄貴から貰ったブレスレットを見る、
 貰ったはいいけど使い方を教わっていなかった。しかもボタンらしき物は何も無いのだから調べようが無い、まぁ自爆するって事は無いだろうけど、下手に触るのは凄く危険だったからだ。
 それにしても納得できないダサいデザインだった。
 まるで特撮ヒーローの変身アイテムだった。いや、今じゃもう少しまともなのがあるかなぁ? よく分からないけど…… 
 私はため息を零すと買い物を自転車の籠の中に入れた。
 その帰り道だった。病院の前を通りかかると私の目に前に薄いピンクの生地に白いコスモスが描かれた白いハンカチが落ちてきた。
 自転車から降りるとそのハンカチを拾った。
「すみませーん!」
 上の方から声がして顔を上げるとそこには小学生くらいの女の子が病棟から手を振っていた。